「人が恐れている事態は、実際は想像するほど悪くないのだ。」
スペンサー・ジョンソン『チーズはどこへ消えた?』門田美鈴 訳、扶桑社、2000年11月
上野で見つけた隠れ家ラーメン「牛魔王牛肉ラーメン」
地下への階段を降りると、そこには本場河南省の味と、麺打ちライブの臨場感が待っていた。辛さ控えめの漢方スープ、手打ち麺、そして牛肉の旨味──一杯のラーメンが、想像の恐怖を超える体験に変わる。この記事では、入店のきっかけ・店内の様子・注文・歴史・実食レポート・エピソード・訪問後記・アクセス情報を詳しく紹介します。
上野で見つけた隠れ家ラーメン|牛魔王との出会い
上野でご飯を探していたとき、目に飛び込んできたのが「牛魔王牛肉ラーメン」の写真。
赤く煮えたぎるスープに牛肉が沈み、どこか韓国料理のユッケジャンを思わせる。辛さと滋味が混ざり合うような、そんな予感がした。
アメ横の喧騒を抜け、人波を押し分けて少し横道にそれると、そこに現れたのは地下一階へと続く階段。地下というだけで、なぜか心がざわつく。秘密基地、隠れ家、あるいは異世界への入口──そんな想像がふくらむ。
入口からして、すでに怪しい。ふと「引き返そうか」と思ったほどだ。だが、その直前に階段を降りていったのは、幼稚園くらいの子どもを連れたファミリー。まさかの二児連れ。ここで私が後退りするわけにはいかない──そんな妙な意地が芽生えた。
店内は?カウンターから見えるライブ感
店内に入ると、入り口右に半個室のようなテーブル席。入り口から、左斜めに厨房とその前にカウンターがある。
カウンターの後ろに通路を挟んでテーブル席が2つ。席数は多くないが間隔があり、比較的ゆったりした感じだ。
私は、カウンターに案内されたのか、勝手に座ったのかは覚えていないが、気づけば料理の様子が観覧できる“バックネット裏”の席に。
鍋の前はガラスになっており、調理の様子が観戦できるようになっている。
厨房には男性2名、ホールに女性1名の3名体制。

注文は名物『牛魔王牛肉ラーメン』|麺打ちライブが圧巻
カウンターの上には、博物館なみに料理の写真が連打しておいてある。色々見ていると気持ちが揺るぎそうになるが、もともと、写真にひかれてここまで来たわけで、注文は迷わず「牛魔王牛肉ラーメン」。するとすぐ、厨房の奥で麺となる塊がまな板に叩きつけられる。バン、バン、バン──まるで打楽器のような音が響く。そこから麺が伸ばされていく様子は、まさに職人技。注文を受けてから麺を打つという臨場感。いい。とてもいい。だが、まあまあうるさい。
茹でた麺がどんぶりに入り、鍋から牛肉スープがオタマで掬われる。牛肉と野菜が加わり、完成。カウンターの上に置かれる。
牛魔王牛肉ラーメンの歴史とこだわり|本場河南省の味を東京で
牛魔王牛肉ラーメンは、2022年12月に東京・上野でオープンした中国河南省料理を中心とする店だという。店主は河南省出身で、幼少期から手打ち麺文化に親しみ、両親が30年以上続けた麺料理店で技術を学んだという事。日本に来てからも親族の店で7~8年修業し、本場の味を再現することにこだわっているらしい。
理念は「出来立ての麺を提供すること」。注文を受けてから打つ自家製麺は、熟練の職人技でコシと弾力を生み出す。スープは牛すね肉を15種類以上の漢方とともに一日かけて煮込み、旨味を凝縮。河南省では麺が主食であり、牛肉麺は故郷の味。
実食レポート|手打ち麺と漢方スープの実力
麺は意外にも単調な見た目だが、手打ちだけあって細さがまばら。これが技術の結果なのか、意図的なのかはわからない。個人的にはこの不揃いな麺に味わいを感じるが、揃った麺でも食べてみたい気もする。

後半になると、スープを口に含むたびに野菜が混ざってくる。そしてその中に、避けていた懐かしい味が──パクチーだ。食べられないわけではないが、一言あってもよかった。不意打ちを喰らった。
それでも、麺は普通盛りなのに量が多く、かなり満足感がある。
牛魔王の正体は誰?階段に置かれた角が語る謎
さて、なぜ私がこの店に来たのか──
それは、ユニークな名前に惹かれたからだ。「牛魔王」。
いったい何者なのか?結局のところ、それは不明である。
ただ、店に向かう階段には立派な牛の角が置かれている。

どうやら牛魔王は、外に出るときにこの角をつけるのだろう。
ということは、今この角が置かれているということは……牛魔王は店内にいる、ということになる。
では、誰が牛魔王なのか?店主か、麺を打つ職人か、厨房の奥にいる誰かか──それとも、カウンターに座っている私たち自身なのか。
訪問後記
「人が恐れている事態は、実際は想像するほど悪くないのだ。」
スペンサー・ジョンソン『チーズはどこへ消えた?』門田美鈴 訳、扶桑社、2000年11月
『チーズはどこへ消えた?』は、変化を恐れることの本質を描いた寓話だ。
迷路に住むネズミと小人が、ある日突然「チーズ」を失い、新しいチーズを探す物語。
チーズは「幸せ」や「成功」の象徴であり、迷路は「人生」そのもの。変化にどう向き合うかがテーマになっている。
登場人物のホーは、変化が怖くて動けなかった。
「迷路に出たら危険かもしれない」「もっと悪いことが起きるかもしれない」──そんな“想像の恐怖”が足を止めていた。
しかし、一歩踏み出した瞬間に気づく。恐れていたものは、実体ではなく、自分の中で勝手にふくらんだ影だった。この気づきが、ホーを前へ進ませる原動力になる。
階段を下り、目に入った「牛魔王」という店の看板の上に掲げられた言葉。
「人生苦經 再来一碗」 ——人生は苦しみの連続だ。もう一杯どうぞ。
哲学的で、不気味で、名前のインパクトも相まって、想像の恐怖が膨らむ。

しかし、ホーの名言を思い出し、暖簾をくぐった瞬間に霧は晴れた。
そこにいたのは牛魔王でも魔族でもなく、ただの優しい店主と見た目より辛くないラーメンだった。
恐れは、行動した瞬間に消えていく。上野の路地で、ホーの迷路を追体験したような一杯だった。
8. アクセスと店舗情報
- 店名:牛魔王牛肉ラーメン
- 住所:東京都台東区上野4-8-9 Oakビル B1F
- 最寄り駅:JR上野駅 徒歩3分、京成上野駅 徒歩1分
- 営業時間:月~土・祝:11:00~翌6:00/日曜:11:00~23:00
- 定休日:なし
- 電話番号:03-5817-8327
- 周辺環境:アメ横商店街、上野恩賜公園、美術館・博物館
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