一言する時は必ず温然和気婦人好女の如し。是れが気魄の源なり
山口県教育会編『吉田松陰全集』9、岩波書店
札幌らーめん 北の大地
新宿三丁目でランチに迷ったら、札幌らーめん北の大地の辛味味噌つけ麺という選択があります。白味噌ベースのつけ汁は重すぎず、辛味は輪郭を整える役割。80年代歌謡曲が流れる店内で、味と空気のバランスを楽しむ一杯でした。
「北の大地」は、店頭に「創業 昭和47年(1972年)」と明記されている。 これが公式に確認できる創業年となる。
店の味の源流は、銀座すずらん通りの札幌ラーメン《石狩》にある。 北の大地はその流れを受け継ぎ、新宿で営業を続けてきた。
2019年にはビル老朽化により恵比寿へ移転し、 2022年に再び新宿三丁目へ戻って営業を再開した。創業者名や運営会社名は公表されておらず、 公式情報として確認できるのは 創業年・系譜・移転の経緯 のみである。


入店きっかけ・理由
味噌つけ麺にひきづられて
間宮さんと新宿でランチ。
前回、萬馬軒でつけ麺が食べれなかった事をひきづっていた。
間宮さんはつけ麺が食べたいと。しかも味噌がいいと。
完全にひきづってるわ。
そこまでいうなら付き合いましょう、という流れになって、新宿で味噌のつけ麺を食べるなら、という事で「北の大地」に向かう事にした。
昼時を少し外したこともあり、前に5名並んでいたが流れは良かった。
並んでいるうちにメニューを渡され、じっくり吟味して、並んでいるうちに注文を取りに来る。
間宮さんは安定の味噌つけ麺。
そして、今度は私がつけ麺間宮さんにひきづられて、辛味味噌つけ麺を注文


北の大地 店内風景
店内のようすと空気感
ドアは横にスライドさせて開ける引戸。
ドアにはやたらと「支払いは現金のみ」を伝える販促が。食券制ではないので最後の支払い時に現金がありませんって事が頻発している事が安易に想像できる。
店内入り右側にレジがあり、左側にカウンター。
奥にはテーブルが1卓あり、真ん中に仕切りを置いて2人づつ座れる様になっている。
全体的に横に細長い造りで、動線はシンプルだ。
店員さんは店のオリジナル黒Tシャツに黒の帽子
この手のユニフォームが味噌系のラーメン屋に多いのは気のせいか。
この黒で統一された感じが、店内の雰囲気とよく合っている。
ラーメン屋らしいラフさはあるが、だらしない印象はない。
ロゴ入りのオリジナルTシャツというのも、チェーンっぽさより「この店の色」を出しているように見える。
味噌ラーメンというジャンル自体が、どこか無骨で力強いイメージがあるせいか、黒Tシャツと黒帽子の組み合わせが妙にしっくりくる。
厨房と客席の距離も近く、動きやすさを優先した服装なんだろうな、というのも伝わってくる。
カウンターを抜けて奥のテーブルにいくが、壁との距離はまあまあ近い。
カバンがあると、少し気にしながら歩かないといけない。
昼時を外した時間帯でも、それなりに人の気配があり、通路を通るときは自然と身体を細くする。
派手な装飾はなく、どちらかというと実用重視。
一人でも入りやすく、複数でも落ち着いて座れるように考えられている印象だ。
新宿という場所柄を考えると、必要なものだけを残した、ちょうどいい店内だと思う。
実食レポート
辛味噌つけ麺の第一印象


並んでいる間に注文していることもあり、出てくるまでの時間はカップラーメンと同じ3分と、あっという間だった。
さて、北の大地の辛味味噌つけ麺は、「辛さで押す」というより、味噌に輪郭をつける役割として辛味が効いている。
ベースは通常の味噌つけ麺と同じ白味噌系と思われるが、そこに辛味を足すことで、全体の印象がぐっと引き締まる。
唐辛子由来と思われるピリッとした刺激はあるが、口の中が痛くなるほど強い辛さではない。
辛さとしては、ちょうどよい、といった感じだ。
麺とつけ汁
麺は中太で、表面はつるっとしているが、中には程よく芯が残るタイプ。
持ち上げたときの見た目はいかにも札幌ラーメンの系譜を感じさせるが、噛んだときの印象は重たくない。
ちなみに、麺は“プリプリ中華麺”と“厚皮餃子の皮”で地元に愛される製麺所、関屋城南食品の麺である。
つけ汁が濃すぎない分、麺そのものの食感が素直に伝わってくる。
つけ汁は白味噌ベースに辛味を加えたもの。
ドロっとした濃厚系ではなく、さらっとした口当たりで、麺をくぐらせるたびに味噌と辛味が段階的に乗ってくる。
味噌つけ麺について


つけ麺間宮さんが注文した辛味を加えない通常の味噌つけ麺は、全体の印象がより穏やかで、白味噌のやさしさが前に出る。
つけ汁は同じくさらっとしたタイプで、コクはあるが主張は強すぎない。
刺激や変化を求めるなら辛味味噌、
味噌そのものを落ち着いて味わうなら通常のつけ麺。
北の大地のつけ麺は、その差がわかりやすく用意されているのが印象的だ。
訪問後記
一言する時は必ず温然和気婦人好女の如し。是れが気魄の源なり
山口県教育会編『吉田松陰全集』9、岩波書店
吉田松陰(1830〜1859)
幕末長州藩の思想家・教育者で、後の明治維新を動かす若者を育てた人物である。彼は「行動する思想家」として知られ、学問と実践を結びつける姿勢を貫いた。萩に生まれ、幼い頃から兵学に秀でた松陰は各地を遊学して視野を広げ、黒船来航時には国の未来を案じて密航を試みるほどの行動力を見せた。
投獄後に開いた松下村塾では身分を問わず志ある若者を受け入れ、「至誠」を軸に学びと行動を重視する教育を行った。安政の大獄で29歳の若さで刑死したが、高杉晋作・久坂玄瑞・伊藤博文ら多くの弟子に影響を与え、その思想は明治維新の原動力となった。
強い言葉を放つことや、自分の正しさを押し通すことよりも、場の空気をあたため、和やかにすること。
吉田松陰は、それこそが人の内側にある本当の強さ、つまり“気魄”の源になるのだと言っている。
声を荒らげず、威圧せず、しかし芯は失わない。
この短い言葉には、「空気を読む」ことの重みが、ずっしりと詰まっている。
店とのつながり
店内には、80年代の日本の歌謡曲が流れていた。
この手のラーメン屋では、なぜか80年代の歌謡曲が流れていることが多い。
そして、不思議なことに、だいたい相性がいい。
ここに藤井風が流れることは、まずない。
ましてやHIPHOPやレゲエが流れることもない。
けんもほろろ、である。
立ち食いそばならラジオがいい。
ラーメン屋なら歌謡曲。
音楽はBGMでありながら、その場の輪郭を決定づける重要な要素だ。
「場に合っているかどうか」。
その一点だけで選ばれている音。
この空気の作り方は、吉田松陰の言葉とも、確かにつながっている気がした。
自分の学び
そんな空気の中で、私は完全に場を読み違える。
懐かしい旋律につられ、思わず口ずさんでしまい、間宮さんに注意をされる。
自分では気づかないうちに、その場が大切に保とうとしていた雰囲気を、あっさりと壊してしまっている。
温然和気、婦人好女のごとし。
頭ではわかっていても、実践は難しい。
ラーメン屋のBGMひとつでさえ、その場に身を委ねる姿勢が問われている。
アクセス+店舗情報】
店名:らーめん 北の大地 新宿店
住所:東京都新宿区新宿3-28-2 フクモトビル1F
最寄駅:
東京メトロ丸ノ内線・副都心線 新宿三丁目駅 徒歩約1分
JR 新宿駅 東口 徒歩約5分
営業時間:11:00〜23:00
支払い方法:現金のみ
席構成:カウンター席・テーブル席あり



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