「諸君は、諸君の油断大敵という気持を決してゆるめてはならない」
「チャーチル名演説集」成瀬恭編 チャーチル研究会訳、原書房
今回は市川にある立ち食いそば「鈴家」。
市川駅直結の施設内にありながら、事前に知らなければ気づかない立ち食いそば屋「鈴家」。
横殴りの雨の日、外に出ずに行けるランチを探してたどり着きました。名物ゲソ天を外し、かきあげ天そばを選んだ一杯は、立ち食いそばの役割をきちんと果たす落ち着いた味わい。雨の日に妙にハマった、その理由を書き留めます。


入店きっかけ
市川駅直結なのに、気づかない立ち食いそば
ランチタイム、市川駅での商談を終え、ようやく楽しみにしていた昼食の時間だ。
ただ、この日は横殴りの雨。できれば外に出るのは避けたい。
そこで調べて目に留まったのが鈴家だった。写真には、丼を覆うように大胆に置かれたゲソ天そば。これは気になる。
いざ市川駅から向かってみると、店は駅側ではなく、むしろ駅とは反対側の建物の奥まった位置にありる。
事前に知らされていなければ、ここにそば屋があるとはまず気づかない位置にある。
さらに言うと、駅から向かう通路は途中でクランクしており、初見では「本当にこの先に店なんてあるのか」と不安になるほど。
半信半疑で曲がり角を進んでいくと、ようやく赤い看板が視界に入る。 この看板も決して強く主張するわけではなく、通路の風景に静かに溶け込んでいる。
でも逆に言えば、この“わかりにくさ”と“目立たなさ”を乗り越えて辿り着いた人だけが味わえる一杯なのかもしれない。
注文
入口と券売機、即断即決が求められる空気

入口は2箇所。そして入口付近の2箇所に即断即決の券売機がある。
相変わらず初めての券売機は困る。
店の外にあったメニューをもっとちゃんと見るべきだった。
券売機には大きく分けてかけそば、かけうどんに、冷やしそば、冷やしうどんがベースとなり単品でトッピングを注文。
そのため、ボタンにはかき揚げそばとか、月見そばなるものはない。
メインを頼み、それに加えてトッピングを注文するスタイルだ。
今回は、ゲソ天を外し、「かけそば」と「かき揚げ」とそれぞれの食券を購入。
食券をカウンターの上に置き、位置につく。
店内風景
カウンターの距離感と、少し気になるところ
カウンターはアクリル板で仕切られており、左右の間隔もしっかり空けられており、比較的ゆっくり食事が出来る。
気になるのはテーブルの上が油でキドギドになっている。カウンターにあったクロスで拭いたが、そこらで拭いたところで変わるものではない、積み重ねてきたものがある。
食べている間は全く気にならなかったが…。
鈴家とは?
市川で長く続く、立ち食いそばの老舗
鈴家は、千葉県市川市・JR市川駅南口近くにある立ち食いそば店。
複数の公開情報によると、創業は約40年以上前とされており、市川駅周辺で長く営業を続けてきた。現在の場所である、市川駅直結の施設(タワーズイースト2階)へは、駅前再開発に伴い移転している。それ以前は、駅近くの路地で約25年間営業していたと紹介されている。
鈴家は、イカのゲソ天を看板メニューとする立ち食いそば屋として知られ、テレビ番組や地域メディアでも取り上げられている。BS日テレの番組では、創業年数や移転の経緯、名物であるゲソ天の仕込み方法について具体的に紹介されている。
実食
かきあげ天そば、立ち食いの基本形
今回はかきあげ天そば。

食券を出してからの提供はかなり早い。厨房の動きに無駄がなく、昼時でも流れが止まらない。
丼を受け取ると、かきあげの衣は厚すぎず、揚げ色も落ち着いている。そば全体を覆い隠すほどの存在感。
つゆは、関東の立ち食いそばに多いキレの強さよりも、やややわらかい印象。
先日の蕎麦のつゆが強めだったので、鈴家のように出汁の輪郭が前に出すぎず、飲み進めても喉に引っかからないここはつゆが妙にハマる。
そばは玉川食品の麺で、細めで、ほどよくコシが残るタイプ。つゆを吸いすぎず、かきあげの油ともぶつからない。立ち食いとしては標準的だが、全体のバランスは取りやすい。
かきあげは、玉ねぎを中心にした構成で、甘みが前に出る。衣がつゆを吸っても重たくなりすぎず、最後まで崩れにくいのが印象的だった。派手さはないが、毎日食べる前提で作られている感じがする。
食べ進めているうちに、周りの音や店内の細かいことは気にならなくなる。立ち食いそばとしての役割を、きちんと果たしている一杯だと思う。
訪問後記
「諸君は、諸君の油断大敵という気持を決してゆるめてはならない」
「チャーチル名演説集」成瀬恭編 チャーチル研究会訳、原書房
ウィンストン・チャーチル(Winston Leonard Spencer Churchill, 1874–1965)は、軍人・政治家・作家として20世紀を代表する人物だ。名門スペンサー家に生まれ、若くして戦場を経験し、その体験をもとに従軍記者としても成功した。政治家としては第一次世界大戦のガリポリ作戦で大きな挫折を味わうが、そこから復活し、第二次世界大戦では英国首相として国民を鼓舞し続けた。戦後は「鉄のカーテン」演説で冷戦の到来を警告し、1953年にはノーベル文学賞を受賞。失敗と再起を繰り返しながらも信念を貫いたその生涯は、今もリーダーシップの象徴として語り継がれている。
この言葉を残したウィンストン・チャーチルは、最初から“勝てる指導者”だったわけではない。
第一次世界大戦において、彼は当時の常識から外れる判断を下し、結果として大きな失敗を経験している。
第一次大戦の主戦場は、フランス・ベルギーにまたがる西部戦線だった。塹壕戦が続き、連合国もドイツも膨大な犠牲を出しながら戦線は膠着していた。この状況下での「正攻法」は明確だった。
西部戦線に兵力を集中させ、正面突破を狙う総力戦。これが軍事指導部の常識だった。
だがチャーチルは、この正攻法を外れた策に活路を求める。
側面から状況を打開しようとした試みは、結果的に失敗に終わり、多くの批判を浴びることになった。この経験は、彼にとって「判断を誤った歴史」として刻まれる。
それでも、この失敗は無駄にはならなかった。
第二次世界大戦においてチャーチルは、「正しいとされている道であっても、思考を止めてはいけない」「慣れた選択ほど油断が潜む」という教訓を、指導の根幹に据えることになる。
この言葉が「油断大敵」と繰り返し語られるのは、
勇敢さを戒めるためではなく、判断を簡単にしてしまう自分自身への警告としてだった。
鈴家という店とのつながり
鈴家は、ゲソ天で広く知られる立ち食いそば屋だ。
テレビに取り上げられ、口コミでも語られ、今では店の代名詞のような存在になっている。
実際に券売機の前に立ってみると、その空気がよく分かる。
多くの人が迷わずゲソ天を選び、食券を買うまでの時間も短い。即断即決。
たぶん、その多くは常連だ。鈴家に来る理由と、頼むものが、すでに身体に染みついている。
駅直結でありながら分かりにくい場所。
横殴りの雨の日に、わざわざここまで来る人たち。
その条件を越えてでも、この一杯を求める理由が、そこにはある。
自分の学び
今回、私はそれを知りながら、あえて正攻法を避けた。
初めての店であること、ゲソ天の情報量の多さ、券売機の前での一瞬の判断。それらが重なり、かき揚げ天そばを選んだ。
かき揚げ天そばは、間違いなくおいしかった。
だが、鈴家という店を知る、という意味においては、正攻法で攻めるべきだったのかもしれないとも思う。
「あえて外す」という選択が、慎重さではなく、単なる油断だった。
ここに、チャーチルの言う「油断大敵」があったのかもしれない。
次に来る理由は、もう決まっている。
アクセス+店舗情報
- 店名:鈴家
- 住所:千葉県市川市市川南1-1-16 2F
- アクセス:JR市川駅 南口直結
- 営業時間:8:30〜21:00
- 定休日:日曜日

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