荻窪駅北口の商店街で、行列必至の人気店「久保田」に潜入。
荻窪は“ラーメンの聖地”とも呼ばれる街。昭和から続く老舗の春木屋や丸信、そして新進気鋭の個性派まで、多彩な店が軒を連ねています。
ここでは、伝統的な中華そば文化と現代の進化系ラーメンが共存し、食べ歩きはまさにグルメ探訪の醍醐味。そんな荻窪で、地域に根ざした一杯を提供する『久保田』を訪れました。
創業背景から店内の雰囲気、実食レポートまで徹底紹介します。
荻窪ラーメン食べ歩きで出会った久保田|入店のきっかけ
荻窪北口前商店街、荻窪銀座街周辺の“ザ・荻窪ラーメン”を食べ歩いているうちに、
「この地域を制覇したい」という野心が芽生えてきた。
そんな中、候補に浮かんだのは老舗の春木屋と、いつも行列ができている久保田。
ところが、この日はなぜか久保田の前がガラガラ。
まるで台風の目のような光景に「今しかない!」と直感。
迷わず暖簾をくぐった。

荻窪ラーメン久保田の店内は?夫婦の呼吸と静かなカウンター席
ドアを横にスライドさせて店内に入ると、久保田さんと思われる男性と、その奥様らしき女性から「いらっしゃいませ」と声がかかる。
なぜ夫婦だと感じたのか――二人の挨拶のタイミングがぴたりと合っていたからだ。
長年、店だけでなく家庭でも寄り添ってきたからこそ生まれる呼吸感に、思わずほほえんでしまう。
店内はカウンターのみで、席数は7席ほど。シンプルで清潔感があり、余計な装飾はない。
入店した瞬間、客が誰もいなかったのは奇跡に近い。
普段は行列必至の人気店だけに、このタイミングで運を使ってしまったのでは…と少し後悔するほどだった。

久保田のメニューは超シンプル|中華そばを選んだ理由
久保田のメニューは驚くほどシンプル。
選択肢は「中華そば」と「チャーシューメン」の二本柱のみで、そこに大盛りやトッピングを加えて自分好みに仕上げるスタイルだ。
今回は迷わず基本の中華そばを注文。
ラーメンではなく“中華そば”と名付けているところに、荻窪ラーメンのブランド感を強く感じる。
価格も良心的で、中華そばは800円、大盛りは+100円、トッピングは50円からと、今の時代ではかなり庶民的。
ネギやメンマなどの追加も考えたが、初訪問なのでブレずにど真ん中を貫くことにした。

久保田の歴史|ホープ軒で修業した店主のこだわり
久保田雄さんは2011年11月、荻窪駅北口から徒歩4分の荻窪銀座商店街にオープンしたラーメン店だという。
店主は東京・阿佐ヶ谷の老舗「ホープ軒本店」や製麺所で約7年間修業を積み、その経験をもとに独立したらしい。
「毎日食べられる一杯」を目指し、濃厚ながら優しい味わいの豚骨醤油スープと自家製麺を完成させたという。
開業当初は集客に苦労したが、地道なビラ配りやテレビ紹介をきっかけに人気店へ成長。
現在では荻窪ラーメンの代表格として知られる存在になっている。
久保田の中華そばを実食|細麺と濃厚スープ、そしてネギの演出
注文から約5分、目の前に現れた中華そばは、背脂が浮かぶ豚骨スープが食欲をそそるビジュアル。

スープは豚骨と魚介の旨味が重なり、濃厚ながら後味はすっきり。
レンゲを口に運ぶと、まろやかなコクが広がり、思わずもう一口と手が止まらない。
麺は意外にも細麺で、しなやかな食感が特徴。
スープとの絡みがよく、最後まで飽きずに食べ進められる。
ちなみに麺は中太麺やちぢれ麺に変更できるらしい。チャーシューは柔らかく、脂の甘みがスープに溶け込み、全体のバランスを引き立てている。

そして、中華そばを食べる為に、目線を下げている間に、目の前にネギが用意されている。
自分の好みに合わせて入れられる。ネギも決して安くない。これも店から贈り物。
無駄に多く入れる事は避けないといけない。
中華そばを啜り、しばらくして、顔を上げると、ネギは消えていた。
次の人を喜ばせる為に移動したのだろう。――そんな小さな演出にも、この店の温かさを感じた。
久保田で感じた地域の絆|店主と常連客の温かいやり取り
私の次に入ってきたのは常連客らしき男性。
「お久しぶり」と店主と奥様が声をかけると、「奥さん最近見ないけど」と奥様が続ける。
「実は最近体調が悪くて出歩いてないんだ」と男性。
「そうなのね、よく見かけていたけど最近見ないから心配していたのよ」と奥様が返す。
「また、よくなったら来ますよ」と笑顔で答える男性。
その後は地域の話や個人的な近況が自然に続く。
聞いているだけで、この店が地元に深く根付いていることが伝わってくる。
2011年の創業から今年で15年。
積み重ねてきた時間と信頼があるからこそ生まれる会話だと感じた。
訪問後記|地域愛と一杯の哲学
「Think globally, act locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」
※出典については諸説あり、1960〜70年代の市民活動の中での言葉。有力な説としては、ルネ・デュボスが1980年の著書『地球への求愛(Only One Earth)』などで提唱し、広めたとされる。ただし、他にもデイヴィッド・ブラウワー(環境活動家)、ジャック・エリュール(社会思想家)、バックミンスター・フラー(建築家・思想家)、ヘイゼル・ヘンダーソン(未来学者)など複数の人物が関与した可能性があり、「誰の言葉か」については論争がある。
「Think globally, act locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」という言葉は、環境保護や持続可能な社会づくりを目指す理念として広まりまった。
世界的な視野を持ちながら、地域で具体的な行動を起こすこと――これはSDGsの根幹にも通じる考え方。
荻窪のラーメン店・久保田は、まさにその精神を体現しているように見える。
誰でも気軽に立ち寄れるように価格を抑え、ネギの無料サービスや常連との温かい交流を通じて地域に喜びを届ける。
その行動は、単なる商売を超えて「地域愛」という価値を積み重ねている。
実際に、久保田が地球規模で考えているかはわからないけど、地域を見守り、地域のために行動する――それはSDGs的な価値そのもの。
そんな久保田があるからこそ、荻窪ラーメンというブランドは今日も輝いている。
アクセスと店舗情報
店名:ラーメン久保田
住所:東京都杉並区上荻1-4-3
最寄り駅:JR中央線・総武線「荻窪駅」北口から徒歩約2分
営業時間:
平日:11:30~15:00/17:30~23:00
日・祝:11:30~21:00(売り切れ次第終了)
定休日:水曜日
電話番号:03-3398-8357
座席:カウンター7席のみ
周辺環境:荻窪銀座商店街内。散策やカフェ巡りにも最適。



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