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新宿小滝橋・ちゃん系ラーメン|クマちゃんラーメン 中華そばレポ

過去のどの時代にも増して、私たちの誰もが、一度も会ったことのない人々に依存し、彼らもまた私たちに依存しています。このグローバルな相互依存の外にいる人は一人もいません

―「経済成長がすべてか?」 マーサ・C.ヌスバウム (著), 小沢 自然 (翻訳), 小野 正嗣 (翻訳)岩波書店

クマちゃんラーメン

新宿西口・小滝橋通りにあるクマちゃんラーメンを、街歩き目線で食レポします。

初めてのちゃん系ラーメンの体験。中華そばと無料めしの実食から、ちゃん系らしい優しさの理由、なによりちゃん系らーめんって何?という疑問に応える中で、見えてきた分断ではなく共生で広がる背景をまとめました。

新宿小滝橋 クマちゃんラーメンの外観画像
新宿小滝橋 クマちゃんラーメンの外観

新宿ランチの流れで、ふと現れたクマちゃんラーメン

吉岡さんと新宿でランチをすることになった。
休日ということもあって、街全体に人が多く、どこもにぎやかな空気が流れている。

新宿西口の小滝橋通りを歩いていくと、通り沿いには食事どころがずらりと並んでいる。
このあたりは選択肢が多いぶん、逆に決めきれない。そんなことを考えながら、少し駅から離れたところまで来たとき、目に入ったのがクマちゃんラーメンだった。

ちゃん系ラーメン、という言葉はよく聞く。
新橋の「ちゃん系」と呼ばれる店にも何度か行こうとしたことはあったが、そのたびに長蛇の列を見て、結局あきらめてきた。

店頭を見ると、待ちは2名。
ただ、ちょうど店の中から何人か出てきたところだった。
「これはチャンスかもしれない」
そう思えたのが、入店を決めたきっかけだった。


券売機から見える店のつくりと、人の動き

入口に入る前、まず券売機がある。
メニューはかなりシンプルで、大きく「中華そば」と「もり中華」の2つの構成。そこにトッピングと量を変えるオプションが並ぶ形だ。

特徴的なのが、めし無料のシステム
希望する人は、券売機の下の方に置かれている札を取り、食券と一緒に渡す。ただ、この札の位置が初見だとまあまあわかりにくい。そのためか、口頭で「めしください」と頼む人も多かった。

新宿小滝橋クマちゃんラーメンメニュー画像
券売機(メニュー)
ちゃん系らーめんの特徴的なシステムのめし無料の札
この札がライス注文の食券代わりになる

店内に入ると、中央に厨房があり、それを囲うようにL字型のカウンターが配置されている。
カウンターにはラーメンの料理担当と、カウンター担当の女性が1名。女性はカウンター周りの整理とチャーシューを切る担当で、全体は料理担当が切り盛りしている。

カウンターの高さはそれほど高くなく、調理の過程がよく見える。
そのおかげで、待つ時間も意外と飽きない。

水はセルフで、冷水機の隣には栓抜きが置かれている。
瓶ビールもセルフなのだろうか、と少し考える配置だ。

印象的だったのは、料理担当の人の立ち振る舞い。
カウンター担当の女性に対して威張る様子はまったくなく、丁寧に指示を出していて、その姿勢にはかなり共感を持てた。ただ、この料理担当が「クマちゃん」本人かどうかは、分からないが、熊とはちょっと違う気がする。


創業背景・歴史

クマちゃんラーメンを支える「ちゃん系」という流れ

クマちゃんラーメンを理解するには、まず「ちゃん系ラーメンとは何か」から触れておく必要がある。

ちゃん系ラーメンは、2020年に東京・神田で誕生した神田ちえちゃんラーメン を起点とする、新しいラーメンの系譜だ。


フランチャイズではない広がり方

ちえちゃんラーメンの成功後、新宿えっちゃんラーメン、池袋ひろちゃんラーメンなどが生まれ、
やがて ちゃんのれん組合 という緩やかな共同体が形成されていく。

この組織は、一般的なフランチャイズとはまったく違う。

ロイヤリティはない
店名も統一しない
各店は完全に独立経営

それでも、
味の方向性
オペレーション思想
原材料(特に麺)

は共有されている。

つまりこれは、支配しないが、バラバラにもならない
非常に珍しい広がり方だった。


中にいる製麺所、達磨製麺

ちゃん系を語るうえで欠かせないのが、達磨製麺の存在だ。

ちゃん系の麺は、高加水・平打ちで、伸びにくく、
スープをなみなみ張る前提という、極めて扱いの難しい仕様になっている。

これを
「毎日」「大量」「安定して」供給できる製麺所はほとんどない。

そのため達磨製麺は、単なる取引先ではなく、ちゃん系という業態そのものを成立させる基盤として
運営側に近い立ち位置を担っている。


そして、クマちゃんラーメンへ

ちゃん系は神田から始まり、
高円寺のともちんラーメン、
中野の邦ちゃんラーメン、
新橋のニューともちんラーメン
へと広がっていく。

その流れの中で登場したのが、
新宿・小滝橋通りという激戦区に店を構えたクマちゃんラーメン だ。(ようやく登場!)

家系、二郎系、老舗有名店がひしめくこの場所で、ちゃん系が本当に通用するのか。
クマちゃんは、いわば実験的な存在だった。

ここで生き残ったという事実は、ちゃん系が一過性の流行ではなく、日常ラーメンとして成立した ことの証明でもある。


決定的な違い

家系、二郎系、ちゃん系は、同じ「腹いっぱい系」に見えて、思想がまったく違う。

家系は、血統と正統性。
二郎系は、極端な体験と非日常。
そしてちゃん系は、日常性と失敗しにくさ。

説明不要で、初見でも安心でき、老若男女が自然に入れる。

ちゃん系が目指しているのは、生活に組み込めるラーメン なのだ。


実食レポート

中華そばと、無料めし

クマちゃんラーメン画像
中華そば
提供された瞬間の緊張感

食券を出してから10分ほどで、中華そばがカウンターに置かれた。
丼の縁までなみなみと注がれたスープが、まず目に入る。これをカウンターから手前に移動しないといけない。

平衡感覚が弱い為、波波に入ったスープはやはり溢れた。
ただし、どんぶりの下に皿があるので、溢れたスープはその皿が受け取ってくれる。

豚清湯×醤油、穏やかに始まるスープ

スープは豚清湯ベースの醤油。
表面は澄んでいるが、見た目以上に厚みがある。ひと口目は意外なほど穏やかで、醤油が前に出すぎることも、豚の旨みが暴れることもない。

ただ、飲み進めていくと印象が変わる。
最初はおとなしく感じた味が、温度が少し下がるにつれて、じわじわとコクを見せてくる。量が多くても最後まで味が崩れない。

ほうとうを思わせる、多加水平打ち麺

麺は多加水の平打ち麺。
しなやかで、ムチっとした弾力があり、ほうとううどんのような感触だ。時間が経っても伸びにくい。

チャーシューと、無料めしの役割

チャーシューは大判だが重すぎない。
無料めしにスープやチャーシューを乗せて食べると、この一杯の設計思想がはっきりする。
中華そばに米という罪悪感もあるが、ここは割り切ってちゃん系を楽しむ。

んモーッHOT

卓上調味料のひとつとして「んモーッHOT」が置かれている。少量加えるだけでスープにコクと香ばしさが増し、一気に印象が変わる。

「んモーッHOT」は、唐辛子をベースにした辛味噌状のペーストで、黒みがかった見た目と強めの辛さが特徴。

何よりびっくりしたのが、痺れ系であること。担々麵でたまにある痺れ系。意外性があったが、この味にはマッチして悪くない。

ただ、入れすぎると辛さが前に出るため、少しずつ足すのがおすすめ。中華そばやもり中華の味変にぴったりで、酢と組み合わせる食べ方も推奨されている。ちゃん系ラーメンらしい力強さをさらに引き立てる名脇役だ。

その特徴は一見すると懐かしい。

豚清湯×醤油の中華そば
多加水の平打ち麺
大判チャーシュー
スープなみなみ、白飯無料

ただしこれは、単なるノスタルジーではない。
ちゃん系は、昔ながらの中華そばを
「現代の生活リズムに最適化された日常食」 として再設計したラーメンだった。

この一杯が支持された背景には、コロナ禍という時代状況も大きい。
強すぎる個性に疲れ、高級化・尖りすぎたラーメンから距離を置きたくなり、選ぶ方も「失敗したくない」「普通に満足したい」という心理が広がっていた。

ちゃん系は、そうした空気にしっかりフィットした。


訪問後記

相互依存という前提

過去のどの時代にも増して、私たちの誰もが、一度も会ったことのない人々に依存し、彼らもまた私たちに依存しています。このグローバルな相互依存の外にいる人は一人もいません

―「経済成長がすべてか?」 マーサ・C.ヌスバウム (著), 小沢 自然 (翻訳), 小野 正嗣 (翻訳)岩波書店

この言葉が示しているのは、現代社会を生きる私たちが「共に生きる存在」であるという事実である。私たちの生活は、遠い国で働く人々や、見えない制度、自然環境との関係の上に成り立っている。

誰かの労働や犠牲の上に自分の便利さがあり、その選択がまた他者の生を左右している。

この相互依存の網の中では、完全に自立した個人など存在しない。

共生とは、単に仲良く共にあることではなく、互いの生が結びついている現実を引き受け、他者の生を傷つけない関係を意識的につくり直していく姿勢そのものなのであることを述べている。

マーサ・C・ヌスバウム(Martha C. Nussbaum, 1947年5月6日–)は、現代を代表するアメリカの哲学者であり、倫理学や政治哲学、人権論の分野で世界的に影響力をもつ思想家である。ニューヨーク生まれのヌスバウムは、ニューヨーク大学とハーバード大学で学び、古代ギリシア哲学を専門として研究者としての歩みを始めた。現在も存命で、シカゴ大学において法学と哲学の教授を務めている。

ちゃんのれん連合という「共生前提」のネットワーク

この思想は、ちゃん系が広がってきた形にもよく表れている。
それが、いわゆる ちゃんのれん連合 だ。

フランチャイズではない。
ロイヤリティもない。
店名も統一しない。

各店は完全に独立していながら、
味の方向性やオペレーションの思想、麺といった土台は共有されている。
支配はしないが、バラバラにもならない。
最初から「共生」を前提に設計された関係性と言える。

「他が盛り上がるほど、自分も儲かる」という構図

一般的な飲食業では、他店が流行る=自分の客を奪われる、
というゼロサムの発想が根強い。

しかしちゃん系では、まったく逆のことが起きている。

他の店が評価される
→「ちゃん系っていいよね」という認知が広がる
→ジャンル全体の信頼が積み上がる
→結果として、自分の店にも人が流れてくる

他が盛り上がるほど、自分も儲かる。

だから、系列を隠さない。
競合を敵視しない。
店内で他店の名前が出ることも、特別なことではない。

共生が、人気を生む

これは分断ではない。
奪い合いでもない。
互いが互いを成立させている関係だ。

マーサ・C・ヌスバウム氏が語った「相互依存」は、
経済や社会の話に限らない。
クマちゃんラーメンを含む、ちゃんのれん連合のあり方そのものが、
この言葉を静かに実装しているように感じた。



アクセス+店舗情報

店名クマちゃんラーメン

住所:東京都新宿区西新宿7-5-6 新宿ダイカンプラザ756 1F

電話番号:03-5937-5540

営業時間
月〜金:10:00〜22:30
土日祝:10:00〜22:00

アクセス
新宿西口駅より徒歩約3分
JR新宿駅西口より徒歩約7分



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