真砂なす 数なき星の その中に吾に向かひて 光る星あり
『子規歌集』(岩波文庫)
新宿 自家製麺とインドカレーの店 「よもだそば」
新宿の立ち食いそば激戦区でよもだそばを実食。半たぬき+半インドカレーの魅力、券売機や店内の工夫、“侵略”ではなく“共存”が見える街歩き考察、アクセス情報も網羅。
入店きっかけ・入店理由
西新宿ランチで見つけた“よもぎそば”
西武新宿駅の近くで商談を終えたちょうどお昼どき。ゆっくりランチを楽しむほどの時間はないけれど、まったく余裕がないわけでもない。そんな微妙な時間帯に、西口方面へふらりと歩き、駅の周りをぐるっと回るように散策していたところ、細い路地の先によもだそばを見つけた。
店頭には思わず立ち止まってしまうほど種類豊富なメニューがずらり。さらに、“おすすめはインドカレー”と書かれている。そば屋でインドカレーを推す──そんな意外性を前にして興味が湧かないわけがない。
「ここ、ちょっと気になるな」
そう思った流れのまま、今日はよもだそばに入ってみることにした。

注文
迷わないおすすめセットメニューの選び方
店に入ると、すぐ右手に券売機が構えている。まずはここで注文を決めるわけだが、よもだそばは店頭に大きなメニュー表を掲示しているので、入店前にじっくり作戦を立てられるのがありがたい。
それでも、いざ券売機の前に立つと“即断即決の勝負”が始まる。
かけ、たぬき、きつねといった基本のそば・うどんはすぐ目に入るものの、悩ましいのはトッピングやセットの豊富さだ。
今日はそばを食べるつもりで来た。しかし、名物がインドカレーと聞けば無視できない。ただ、通常サイズのカレーを追加すると確実に食べ過ぎる。そこで頼りになるのが“半カレーセット”。
券売機を探してみると、半カレーの組み合わせは「半たぬきそばとのセット」だけ。選択肢が一つしかないとなれば、もうロープ際。観念して「半たぬき+半よもぎカレー」のボタンを押し食券をもって店内へ。
これは後日談だが、半カレーの組み合わせは「半たぬきそばとのセット」だけと思っていたが、「特大かき揚げそば + 半カレーセット」という半カレーの別セットも存在していた。
これこそが、券売機の“即断即決の勝負”の難しさであり、自らの未熟さを知ることになる。

よもだそば メニュー表 2026年時点
温かいそば(価格順)
| 商品名 | 価格 |
|---|---|
| かけそば | 440円 |
| たぬきそば | 500円 |
| 月見そば | 500円 |
| きつねそば | 540円 |
| わかめそば | 540円 |
| コロッケそば | 590円 |
| イカ天そば | 590円 |
| 春菊天そば | 590円 |
| めかぶそば | 590円 |
| とろろそば | 590円 |
| 山盛リトロロ昆布そば | 590円 |
| 紅生姜天そば | 590円 |
| ごぼう天そば | 590円 |
| ニラ天そば | 590円 |
| 特大かき揚げそば | 590円 |
| モズクとワカメのかき揚げそば | 600円 |
| 山盛もやしたぬきがけそば | 600円 |
| チーズそば | 610円 |
| はらのいそば | 630円 |
| ほうれん草のお浸しそば | 640円 |
| ハムカツそば | 640円 |
| すんきそば | 640円 |
| 二ラ天玉そば | 650円 |
| 持大天玉そば | 650円 |
| 岩下の新生姜天そば | 650円 |
| 鶏ささみ天そば | 660円 |
| みもだカレーうどん・そば | 680円 |
| ニンンそば | 700円 |
冷たいそば(価格順)
| 商品名 | 価格 |
|---|---|
| りそば | 440円 |
| かけそば | 440円 |
| 冷し目見そば | 500円 |
| 冷したぬきそば | 500円 |
| たぬきそば | 500円 |
| 月見そば | 500円 |
| 冷しきつねそば | 540円 |
| きつねそば | 540円 |
| 冷しわかめそば | 540円 |
| 冷しとろろそば | 590円 |
| 冷しめかぶそば | 590円 |
| 冷し山盛りト口口昆布そば | 590円 |
| コロッケせいろ | 590円 |
| イカ天せいろ | 590円 |
| 紅生姜天せいろ | 590円 |
| 春菊天せいろ | 590円 |
| ごぼう天せいろ | 590円 |
| 二ラ天せいろ | 590円 |
| 特大かき揚げせいろ | 590円 |
| 冷しモズクとワカメのかき揚げそば | 600円 |
| 冷し山盛もやしたぬきがけそば | 600円 |
| 冷しばらのりそば | 630円 |
| はらのいそば | 630円 |
| ハムカツせいろ | 640円 |
| 冷しほうれん草のお浸しそば | 640円 |
| 冷しすんきそば | 640円 |
| 冷し二ラ天玉そば | 650円 |
| 冷し特大天玉そば | 650円 |
| 岩下の新生姜天せいろ | 650円 |
| 冷し鶏ささみ天そば | 660円 |
| みもだカレーうどん・そば | 680円 |
| 冷しニンンそば | 700円 |
| 鴨せいろ | 830円 |
セットメニュー
| 商品名 | 価格 |
|---|---|
| 特大かき揚げそば + 半カレーセット | 900円 |
| よもぎカレー + 半たぬきそばセット | 900円 |
| 半よもぎカレー + 半たぬきそばセット | 620円 |
| ねぎとろ丼 + たぬきそばセット | 860円 |
| 中華そぼろ丼 + たぬきそばセット | 860円 |
| とろろ丼 + かけそばセット | 800円 |
| 特大かき揚げ丼 + かけそば | 800円 |
| 特大かき揚げそば + いなりセット | 770円 |
朝定食(7:00〜11:00)各540円
- A:とろろ定食
- B:納豆定食
- C:朝カレー定食
入店時のよもだそば店内レビュー
女性一人でも入りやすい?店内の雰囲気を詳しく紹介
店内へ入ると、奥の厨房で食券を渡す仕組みになっている。温かいそばは「ホット」の台、冷たいそばは「コールド」の台に食券を置くスタイルで、声をかけずに注文内容を伝えられるようになっていた。ただ、「温かいそばですね~」と聞かれるので、その切り分け方法は微妙だ。
立ち食いそばの店だから全席立ち食いかと思いきや、実際には椅子席のほうが多い。
到着したのは昼の1時過ぎだったが、店内は多くのお客さんで賑わっていた。ざっと見渡すと、客層はほとんどが男性で、女性は自分の滞在中で一名だけ。立ち食い文化の心理的ハードルは、まだ女性にはあるのかもしれない。

気になったのは返却口の配置。注文カウンターの横に三段のキャビネットがあり、その下段にはスプーンや蓮華、調味料が並んでいる。返却口の表示と重なって見えるため、分別場所と誤認しそうだった。
BGMは控えめで居心地は悪くない。気になる騒音といえば、外を走るパトカーのサイレンくらい。店内自体は思いのほか静かで落ち着ける空間だった。
創業背景・歴史
よもだそばのルーツと「よもだ精神」
よもだそばは2007年、日本橋で誕生した比較的新しい蕎麦店である。創業者はIT企業出身で、「安い・早い・うまい」という立ち食いそばの王道にひと工夫加えた、“ちょっと変わった店をつくりたい”という思いから店を立ち上げたという。その象徴が名物インドカレーで、本格スパイスを蕎麦屋で提供するという発想は、当初から型破りだった。
この「型破り」の背景には、店名の由来でもある“よもだ精神”がある。
「よもだ」とは、創業者の出身地・愛媛県松山の方言で「いいかげん」「ふざけている」という意味があり、肩の力が抜けた、遊び心ある姿勢を指している。
愛媛松山が生んだ文化と店の原点
その松山は、司馬遼太郎原作『坂の上の雲』の主人公として知られる 秋山好古・秋山真之・正岡子規 を生んだ土地でもある。
店内のポスターにも詳しく語られているとおり、
秋山好古は日本陸軍騎兵の礎を築きながら、戦場でも酒を欠かさない“よもだな一面”を持ち、
秋山真之は日本海海戦の作戦参謀として歴史的勝利を生みながら、艦上で煎り豆を食べて周囲を和ませる人物だった。
そして、近代俳句の祖である正岡子規は、結核に苦しみながらも、ホトトギスになぞらえた俳号「子規」をあえて選び、さらにベースボールを「野球(のぼーる)」と当て字にしてしまうほどの遊び心を持っていた。
こうした松山の“よもだ精神”に惹かれて訪れたのが、かの夏目漱石であり、彼の俳号「漱石」も故事の「漱石枕流」から取られた負けず嫌いで変わり者の象徴とされ、やはりよもだの風土に通じている。
よもだそばの店主もまた、この精神を受け継ぐ者として、
「今後も“よもだの精神”を大切に、皆様に喜ばれ、愛される蕎麦屋を目指す」
とポスターに記している。
つまり、よもだそばの背景には、単なる飲食店の歴史ではなく、
松山の文化・思想・遊び心・型破りな気風そのもの が息づいている。
インドカレーを名物に据えた理由も、実はこの“よもだ精神”の延長線上にあると言えるだろう。
よもだそば 実食レビュー
名物インドカレーと半たぬきそばセットの味を正直レポ

注文した半たぬきそばと半インドカレーのセットは、およそ3分ほどで呼ばれた。
まず目に入るのは、関東のそばつゆらしい濃いめの色合い。ただし香りはすっきりしていて、重たさがない。そばは細めで、思った以上にコシがあり、するすると入っていくタイプ。
立ち食いそばの印象を軽く超えてくる。
そして、よもだそばの名物ともいえる半よもだカレー。
鮮やかなオレンジ色で、見た目から“そば屋のカレー”ではなく“本格的なインドカレー”の雰囲気。ひと口で香りから辛さの順に広がり、思った以上に辛い。アウターを置く場所がなく、着たまま食べていたせいか、はたまた、辛さが故か、汗が出てくる。
今回はそばが伸びないように先にそばを食べ切ったものの、辛さをそばつゆで中和できると考えるとカレー先行も良かったかもしれない。とろみは控えめで、専門店寄りの“本気の味”。ボリュームは控えめだが、セットとしてはちょうどいい。インドカレーが名物の理由が腑に落ちた。
新宿駅 立ち食いそば15ブランドの密集
“天下統一作戦”が始まる
新宿駅のまわりには、確認できただけでも15ブランド以上の立ち食いそばが肩を並べている。しかも不思議なことに、これだけ密集していても「全部行けちゃう気がする」と思わせてくるのが立ち食いそばの魔力だ。短時間で巡れる気軽さと、肩ひじを張らない価格、店ごとに微妙に違う味の個性が、街歩きのテンションを自然と引き上げてくれる。
そんなことを考えていると、ふと脳内で原監督が語りかけてくる。
「目指せ!新宿立ち蕎麦屋・天下統一作戦!」
完全に妄想なのに、なぜか胸が高鳴る。気づけば、自分の中に“新宿立ち食いそば界を侵略しよう”という妙な野心が芽生えている。
街の中で小さな“作戦”を立てながら歩く——その感覚こそ、新宿という街が持つ立ち食いそば文化の面白さだと思う。
訪問後記
真砂なす 数なき星の その中に吾に向かひて 光る星あり
『子規歌集』(岩波文庫)
これは明治の俳人・正岡子規が詠んだ短歌で、
「無数の星がある中で、その中のひとつが自分に向かって光っているように思える」
という “共存の中の希望”を描いた作品だ。
たくさんの存在が同じ空にあっても、互いを消すことなく、
それぞれが自分の光でやさしく照らしている——
そんな静かで温かい世界を表している。
今日、新宿の立ち食いそば屋を巡りながら、この短歌が自然と頭に浮かんだ。
歴史と侵略の構造を考える
よもだそばを出て歩いていると、「なぜ人は排他的な拡張へ傾くのか?」と考えだした。
歴史を振り返れば、複数の主体が並べば摩擦が生まれます。資源や名誉、安全をめぐる思惑が重なると、対立構造が強まりやすい。
そうした状況では、人口・経済・資源・市場の連鎖が働き、外に向かう圧力が増してしまうこともある。さらに、周囲の備えが強まれば自分も強めざるを得ない、いわゆる安全保障上のジレンマも緊張を後押しします。
とはいえ、ここで政治や誰かを評価したいわけではなく、一般論として、構造が人を強く動かすときがある。
それでも新宿そば界は“共存”だった
ところが、新宿の立ち食いそば界には、その構図がそのまま当てはまりません。
よもだそばの隣に別の店があっても、土地の取り合いは起きず、排除もない。
むしろ、並び立つことで「早い・安い・うまい」の需要に多様な選択肢を加え、街の価値が底上げされていました。
理由はシンプルで、都市の構造が国家のそれとは異なるから。
新宿には巨大な人流があり、最適立地が限られていても需要が飽和しにくい。複数の店が同時に成立しうる市場設計があるのです。
こんな景色を眺めていて、もう一度、冒頭の一首を思い出しました。
真砂なす 数なき星の その中に 吾に向かひて 光る星あり
新宿に並ぶ立ち食いそば屋は、まるで夜空に瞬く“光る星”のようだった。
どれだけ多くの店が肩を並べても、互いをかき消すことはなく、
それぞれが街に必要とされる光を静かに放っている。
そこにあるのは、奪い合いではなく、穏やかな共存。
だからこそ私も、よもだの精神をもった正岡子規から学び、立ち食いそばを“天下統一”しようなんて侵略的な発想ではなく、一つに偏らず、さまざまな店を訪れ、その共存の輪に加わりたいと思った。
少しだけ大人になれた気がした。
アクセスと店舗情報
- 店名:よもだそば 新宿西口2号店
- 住所:東京都新宿区西新宿7丁目4-7
- 営業時間:7:00〜23:00(変更の可能性あり/来店前に要確認)
- 定休日:無休
- 周辺環境:西口エリアの飲食密集地。小滝橋通り沿いで立ち食いそば店が多数並ぶエリア。



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