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荻窪 ラーメン|益荒男 焦がし醤油に宿る忠義と仁義

われわれの仲間は、世に忠義をむねとし、人に仁と義を以て接するのが、本来の約束ではなかったか。

—— 吉川英治『新・水滸伝 第三巻』


荻窪南口で見つけたラーメン店「益荒男」

焦がし醤油に宿る香ばしさの奥には、荻窪ラーメンへの敬意と忠義・仁義の思想があった。屋号に惹かれ、店の所作に納得する一杯を街歩き目線で綴る。

荻窪益荒男の店頭風景
荻窪 益荒男の外観。無骨な看板が興味を引く。


入店理由・きっかけ

南口で見つけた“益荒男”という異名の店に吸い寄せられた理由

荻窪ラーメンといえば北口が中心という印象が強いけれど、ふと「南口にもあるのか?」という疑念が浮かんだ。

そこで今日はあえて南口へ出て、荻窪仲町通りをぶらぶらしながらラーメン屋を探索してみることにした。

通りにはいくつかラーメン屋が並んでいたものの、その中でひときわ目を引いたのが、どこか武骨な店名の『益荒男』

ラーメン屋でこの名前は他に聞いたことがないし、そもそも何が“益荒男”なのかもわからない。

その謎めいた響きに惹かれて、「これは確かめに入るしかない」と思い、今日の一杯はここに決めた。


注文:荻窪ラーメンの豊富メニュー

券売機で“焦がし醤油”を即決購入した理由

店に入ろうとした瞬間、ドアに貼られた「扉が大変重たくなっております」の注意書きがまず目に入った。

実際に押してみると本当に重く、思わず「これが益荒男規格なのか」と心の中でつぶやいてしまう。

入店して右側すぐに現れるのは、迷わせる間も与えないほど存在感のある即断即決型の券売機。

メニューはかなり多彩で、焦がし醤油濃厚味噌を主軸に、ラーメンつけ麺を幅広く揃えた構成になっている。

つけ麺は煮干し・海老・牛すじと個性が強く、大盛無料の品もあって満足度が高い。

トッピングは味玉やチャーシューなど基本どころを押さえつつ、ほとんどが100円と割安。

さらにオールトッピングは800円のところ500円という大幅割引が設定されていて、このあたりも利用者思いだと感じる。

サイドメニューもチャーハン、丼もの、餃子と定番を網羅。学生向けサービスやお子様メニューもあり、幅広い客層に寄り添った構成になっていた。

そんな中で今回は“原理原則”にのっとり、店の看板である焦がし醤油ラーメンの食券を迷わず購入した。


メニュー表 ※2026年2月時点

 ラーメンメニュー

メニュー名価格
焦がし醤油ラーメン800円
焦がし醤油チャーシュー麺1050円
みそチャーシュー麺1150円
濃厚みそラーメン900円
辛みそラーメン950円
海老そば900円
塩バターラーメン900円
タンメン900円
お子様ミニラーメン100円

 つけ麺メニュー

メニュー名価格備考
味噌つけ麺900円
辛みそつけ麺950円
煮干しつけ麺1000円大盛無料
海老つけ麺1000円大盛無料
爆裂牛すじつけ麺1000円

蓼 トッピング・サイドメニュー

メニュー名価格
オールトッピング(チャーシュー・のり・味玉・ほうれん草・コーン・メンマ・ネギ)800円 → 500円
チャーシュー250円
味玉100円
メンマ100円
ほうれん草100円
のり100円
コーン100円
ネギ増し100円
大盛(1.5玉)100円
特盛(2玉)150円
ライス(白米)100円(おかわり自由)
ミニコロチャー丼300円
ミニ牛すじ丼300円
餃子400円
チャーハン650円
半チャーハン350円
TKM(卵かけ麺)800円


店内の様子

木目調の空間と“益荒男”の看板が放つ存在感

食券を購入すると、店名のイメージとはまったく違う、柔らかい雰囲気の女性スタッフが迎えてくれて、食券を受け取ってくれた。そのやさしい応対に少し肩の力が抜ける。

店内はL字のカウンターが9席、さらにテーブル席が3卓ほど並ぶつくりになっていて、全体的にこぢんまりしつつも過ごしやすい印象がある。

木目調をベースにした内装に、暖色の照明が重なって、落ち着いた空気をつくっていた。余計な装飾がなく、食に集中できるシンプルな空間だ。

そんな静かな店内でひときわ存在感を放っていたのが、壁に掲げられた大きな「益荒男」の看板。力強い字体が目を引き、まるで客を護るように鎮座している。

この店名に込められた意味を想像しながら席に腰を下ろすと、次第に“どんな一杯が出てくるのだろう”という期待が高まっていった。

「益荒男」の店内。大きな看板ある
店内風景。「益荒男」の看板が圧倒的な示す

創業背景・歴史

“益荒男”はなぜ2021年に南口へ誕生したのか

「益荒男(ますらお)」は 2021年3月26日に開業した新興ラーメン店

開業の背景には、むつみ屋創業者・竹麓輔(たけ ろくすけ)氏の監修があったとされ、味噌を中心に人気を博した“むつみ屋系”の技術を継承しつつ、荻窪の土地に合わせて「焦がし醤油」という独自のスタイルを打ち出した店だという。

荻窪といえば戦後から続く東京ラーメンの聖地で、伝統的な醤油・中華そば文化が根強い街だ。

その激戦区にあえて新規参入した理由について、店主・小島氏は「この街はラーメン好きが多く、古い中華そばの味だけでは若い世代には物足りないかもしれない」と語っている。

つまり「益荒男」という名には、
“激戦区で勝負し、認められたい”
という挑戦的な姿勢が込められていると推測できる(推測ですが)。

また、屋号の「益荒男」は“勇ましい男・立派な男子”を意味する古語で、
力強い焦がし醤油のパンチ力ある味わいを象徴する名でもある。

開業以来、焦がし醤油や味噌、つけ麺など幅広いメニューを拡充しながら、
どんな状況でも同じ味を提供する”という理念を掲げて日々の仕込みを行っているという。

荻窪南口という、北口と比べてラーメン店の選択肢が少ないエリアにおいて、
昔ながらの荻窪ラーメンとは異なる新風を起こす存在として誕生したのが、この益荒男という事になる。


実食:益荒男 焦がし醤油ラーメン

黒鍋の炎から生まれる“益荒男”の看板一杯

荻窪益荒男の焦がし醤油らーめん
焦がし醤油らーめん

カウンター席に座ると、目の前がすぐキッチンになっていて、アクリル板越しに黒い鉄鍋が見える。少し視界はぼやけるものの、鍋からふっと立ち上がる炎の揺らぎははっきり分かり、その光景だけで期待が高まる。

運ばれてきた焦がし醤油ラーメンは、表面には油が浮き、焦がし醤油の香ばしさが広がってきた。

まずスープをひと口。香ばしさの奥に、鶏・豚・魚介の旨味が素直に広がり、最後にゆずの風味が軽く抜けていく。見た目の力強さとは裏腹に、思ったより重さは控えめで、香りが強いのにくどさがない。

そのあたりに、荻窪ラーメンらしい“重すぎない醤油”へのリスペクトを感じた。

焦がしの主張と柑橘の軽さが自然に共存している。

麺は中細ストレートでほどよいコシがあり、スープの絡みも良い。

チャーシューは肩ロース系でやわらかく、軽く炙られた香ばしさがスープの風味がいい。

ねぎとゆずのトッピングが後半まで香りを支え、最後の一口まで輪郭を失わない。

全体として“尖りすぎず、かといって凡庸でもない”という印象。焦がし醤油の個性を軸にしつつ、油の重さに頼らないバランス感が光る。派手ではないが丁寧につくり込まれた一杯だと感じた。


屋号に導かれた入店

“益荒男”は誰だったのか

外から店を眺めていて、どうしても目が離れなかったのが「益荒男」という屋号だった。ラーメン屋の名前としてはあまりに武骨で、意味もすぐには浮かばない。その違和感がそのまま好奇心に変わり、気がつけば入店していた。

入り口では、物腰のやわらかい女性スタッフが丁寧に迎えてくれる。

店名から想像していた荒々しさとはまるで違い、その時点で少し拍子抜けした。

だが、店内に一歩踏み込んだ瞬間、「絶対この人だ」と思わされる存在に気づいた。

カウンター越しに見える厨房。その奥に立つ人物の佇まいが、この店の“益荒男”なのだと直感した。多くを語らず、動きに無駄がなく、一杯一杯に集中している空気感がある。


社会人と思われる客が退店する際には、「気をつけて、いってらっしゃいませ」と声をかけ、午後からの仕事へ背中を押す。

かと思えば、休日の来店と思しき客には「また、お越しください」「ごゆっくりお過ごしください」と、言葉を自然に切り替えている。

益荒男という名から想像する剛健さとは違い、そこにあったのは客一人ひとりの状況を見て言葉を選ぶ、静かな包容力だった。


訪問後記

われわれの仲間は、世に忠義をむねとし、人に仁と義を以て接するのが、本来の約束ではなかったか。

—— 吉川英治『新・水滸伝 第三巻』ゴマブックス株式会社. Kindle 版

この言葉は、作家・吉川英治氏による『新・水滸伝』の一節だ。
中国古典『水滸伝』の世界観を踏まえつつ、吉川英治氏らしい力強さと人間味を与えたこの一文は「梁山泊の仲間たちが何者であるか」を端的に言い表している。

水滸伝は、まさに益荒男たちの物語であり、その中心に立っていたのが宋江という存在だった。
力だけで人を束ねた英雄ではなく、忠義と仁義を失わぬことによって仲間をまとめ上げた人物である。

ここで語られる忠義とは、盲目的に従うことではない。
仲間との約束を守ること。
人に対して仁と義をもって接すること。
環境や立場が変わっても、その姿勢を棄てないこと。
それが“本来の約束”だと、物語は静かに念を押す。

益荒男で感じた「同じ空気」

益荒男という店で感じた空気も、それに近い。
派手な主張はなく、過剰な演出もない。
ただ一杯一杯に向き合い、客の状況を見て言葉を選び、役割を果たす。その在り方は、掲げる理想ではなく、日々の所作としての忠義に見えた。

そしてもう一つ、この店から伝わってきたのは、荻窪ラーメンへの確かなリスペクトだった。
古くからの文脈を踏まえつつも、より若い世代にも開かれた入口をつくろうとしている。

その姿勢は、街の文化を更新するというより、丁寧に引き継ごうとする態度に近い。

監修を務めた竹麓輔氏への思いや感謝も、その延長線上にあるのだと思う。
技術だけでなく、精神ごと受け取り、自分たちの店として実装していく。その誠実さが、丼の中にも、接客の一言にも滲んでいた。

荻窪というラーメンの街で、この屋号が無理なく立っている理由は、おのずと伝わってくる。
忠義とは声高に語るものではなく、約束として守り続けるものなのだと。
ある意味、それこそが“益荒男”である証なのかもしれない。


アクセスと店舗情報

  • 店名益荒男(ますらお)ラーメン
  • 住所:東京都杉並区荻窪5-23-12
  • 最寄り駅:JR中央線・総武線/東京メトロ丸ノ内線「荻窪駅」南口から徒歩約2〜5分
  • 営業時間:11:00〜22:00
    ※夜営業は不定休の場合あり
  • 定休日:なし(店舗都合による休みあり)
  • 支払い方法:現金のみ
  • 周辺環境
    ・荻窪南口仲通り商店会
    ・個人飲食店が連なる生活導線上


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