棚からぼた餅なんてことはありゃしない。努力もしないで成果があがるもんか。「天才とは、天の与える一パーセントの霊感と、自ら流す九九パーセントの汗からなる」という俺の言葉をいろいろな機会に聞いたことがあるだろう
ニール・ボールドウィン『エジソン――二十世紀を発明した男』椿正晴訳、三田出版会
萬馬軒
新宿西口を歩いていて、なんとなく気になっていた味噌ラーメンの店「萬馬軒」。
地下にある店構えや名前の印象もあって、少しだけ入りづらさを感じつつ、今回は流れで足を踏み入れてみました。濃厚な味噌ラーメンの実食記録とともに、店内の空気、向き不向き、そしてラーメン屋でふと思い出した「誠意」についての話まで。軽く読めて、あとに少し余韻が残る一杯の記録です。
入店きっかけ
新宿西口がラーメン激戦区に変貌
新宿西口の改札を出て、ヨドバシカメラのあたりを少し抜けた先に、天下一品が見えてくる。その近くにある萬馬軒。
近年、ラーメン店が次々と出店し、新宿西口はまさにラーメン激戦区へと変貌していた。
実際に歩いてみると、各店がしのぎを削り、火花を散らすような競争が繰り広げられている。
萬馬軒は新宿にいくつか店舗がある店で、名前の響きもあって以前から少し気になっていた存在だった。
その日は一緒にいた間宮さんが味噌ラーメンを食べたいと言っていたので店を探していたところ、店の前に飾られた花が目に入り、自然と萬馬軒へ視線が向いた。
そのため、地下にある店ではあったが、そこで萬馬軒を見つけることができた。
ただ、入口は階段を下っていく形で、店内の様子は外からまったく見えない。どんな雰囲気なのか分からないまま入ることになる。
店名から想像できるのは、萬馬軒ではなく、万馬券。
そのせいか、頭の片隅に競馬のイメージがちらつき、どこか入りにくさを感じていたのも正直なところだ。
ただ、ここは、一発当ててやろうという気分で、入店することにした。


萬馬軒(まんばけん)とは
新宿西口にある「萬馬軒(まんばけん)」は、味噌ラーメンを専門に掲げる店で、昭和63年(1988年)に堀栄次氏によって創業したブランドとされている。
創業地は目黒で、当初から味噌ラーメン一本に軸を置き、都内で移転や展開を重ねながら続いてきた。
流行に合わせて看板を変えるというより、味噌というジャンルを長く抱えてきた系統の店、という立ち位置がまず見えてくる。
萬馬軒(まんばけん)の店名の由来
「萬」は『数多くの』という意味を持ち、お客様に「萬」にも及ぶ幸せをお届けしたいという想いを込めています。
「馬」は『力強く前進する』ことを象徴し、常に挑戦し続ける姿勢を表しています。
「軒」には『お店の軒先でお客様をお迎えする』という想いが込められています。
2025年10月より株式会社ガーデンが事業譲渡
現在の運営は株式会社ガーデンが担っている。
ガーデンは、2015年12月に川島賢が東京都新宿区で設立した企業で、家系ラーメンやうどん業態など、複数の外食ブランドを展開してきた会社として知られている。
萬馬軒については、2025年10月に事業を譲り受け、同年11月から運営を開始し高収益モデルへの改善に着手している。
萬馬軒の多店舗展開はどのように進むのか
買収時点で経常利益率約20%という高い収益性を持つ萬馬軒。
現行モデルのままでも利益を積み上げられる構造が確立されており、無理なモデル転換を行う必要はない。
一方で、店内調理を主体とするため、オペレーションの複雑さが多店舗展開の課題とされてきた。
この点について、店内調理による複雑さは、マニュアルの強化や工程の見直し、さらに壱角家で培った合理化ノウハウの導入によって大きく改善を進めている。
その結果、品質を保ったまま複数店舗を同時に出店できる体制が整いつつあります。また、セントラルキッチンの自社構築にはこだわらず、高品質な食材をより安く調達できる最適な方法を柔軟に選ぶ方針を取っている。
中期目標「30店舗・売上30億円」への道筋
萬馬軒は買収後、看板の視認性向上や営業時間の見直しによって既存店の売上が大きく伸びている。小型店ながら安定した数字で推移しており、今後は出前サービスの導入など、まだ成長の余地も残されている。これからはオペレーションの効率化やマニュアル整備を進め、現場の負担を抑えながら出店を増やしていく方針を掲げている。
そして30店舗・売上30億円という中期目標の達成を目指し、ガーデン社の成長エンジンブランドに育て上げる計画になっている。
看板の変更による看板の視認性向上
萬馬軒のもともとオレンジ色の看板から、黒一色の深い漆黒を背景に、中央へ据えられた金箔のように艶めく文字が静かに浮かび上がる看板に変更し、視認性をあげた。
全体としては格式と重厚感が漂い、どこか静かな威厳をまとった佇まいで、高級バーの看板を思わせる落ち着いた存在感がある。結果的に客数が伸びているいう。

引用:株式会社ガーデンホームページより
また、萬馬軒の高い利益率はラーメン業態だからではなく、効率的な収益構造をつくれる潜在力に着目したM&A戦略の結果である。多くの飲食ブランドを分析してきた知見から、うどんやラーメンは管理と仕組み化が進めば高収益を生みやすいと判断され、その中でもガーデンのノウハウを最も活かせるブランドとして萬馬軒を選んだことが、現在の高利益率につながっているのだろう。
萬馬軒の店内風景

萬馬軒店内に入ると、左手すぐの位置に券売機が置かれていて、ここで即断即決を求められる。右側が厨房で、そのまわりを囲むようにコの字型のカウンター席が配置されている。通路を挟んだ左側にもカウンター席が3席ほどあり、さらに奥にはテーブル席が見える造りになっていた。
全体としては、シンプルで落ち着いたカウンター中心の空間という印象が強い。
カウンター左側にはウォーターサーバーがあり、青い案内板で「グラスはこちら」と示されている。グラスやトレーもきちんと並べられていて、セルフサービスの流れは分かりやすい。
天井はダクトがむき出しになったインダストリアルな造りで、幾何学的な形の照明がアクセントになっている。無機質になりすぎない程度に、今っぽさが混ざっている感じだ。
奥の壁にはアニメ風のキャラクターが描かれた求人ポスターが貼られていて、落ち着いた空間の中に、少しだけ遊び心が加えられている。ちなみに時給は1300円。さすが新宿だ。
萬馬軒 実食

味噌らーめん 990円
濃厚味噌でボリューム満点の一杯
今回は味噌ラーメンを選んだが、味噌の印象は全体に濃厚寄りだった。重たい方向に振り切るというより、味噌の輪郭がはっきりしていて、食べ進めても味がぼやけない。
麺は中太から太めで、ストレートに近い形状。スープとの絡みがよく、もちっとした食感がある。味噌の強さに負けない存在感があり、噛み応えもしっかりしていて、味噌ラーメンには合っていると感じた。
もやしは味噌で炒められているようで、シャキシャキ感は残しつつも硬さはなく、柔らかい。スープと別物にならず、最初から一体として馴染んでいる。ネギもしっかり入っていて、普通でも量としては十分だった。
チャーシューは厚みのあるタイプで、脂身が多め。スープの熱で徐々に柔らかくなっていく。今回は普通盛りにしたが、もやしやネギといった野菜の量も含めて、全体的にボリュームのある一杯という印象だった。
食べている途中で気づいたのは、スープの熱がなかなか下がらないことだった。しばらく箸を止めても、再開するとまだしっかり熱い。結果的に、保温性がかなり高いスープだと感じた。
ちなみに、つけ麺間宮さんが頼もうとした味噌つめ麺はまさかの品切れ。つけ麺の口になっていた間宮さんにとっては、非常に残念な来店になってしまった。



新宿西口萬馬軒 券売機
訪問後記
棚からぼた餅なんてことはありゃしない。努力もしないで成果があがるもんか。「天才とは、天の与える一パーセントの霊感と、自ら流す九九パーセントの汗からなる」という俺の言葉をいろいろな機会に聞いたことがあるだろう
ニール・ボールドウィン『エジソン――二十世紀を発明した男』椿正晴訳、三田出版会
この言葉はトーマス・エジソンの有名な言葉だ。
トーマス・エジソン(1847–1931)は、白熱電球や蓄音機、映画技術などを生み出したアメリカの発明家で、生涯に1,000件以上の特許を取得した「発明王」。
世界初の研究所を設立し、チームで発明を進める近代的な研究開発のスタイルを確立した。彼の技術は電気の普及やエンターテインメント産業の発展など、現代社会に大きな影響を与えている。
水はセルフからの思索
最近、飲食店に入ると、「水はセルフでお願いします」という店は今や珍しくない。
合理的だし、それ自体に不満はない。ただ、ホールに店員が立っていて、特に忙しそうでもないのに、最初の一杯すら出てこない場面に出くわすと、少しだけ引っかかることがある。
「いや、今なら動けるよね?」そんな気持ちが、ふっと湧く。
逆に、店員が忙しそうに動き回っているときはまったく気にならない。
配膳に追われていたり、厨房とホールを行き来していたり、「手が回らない理由」が見えていれば、人は自然と納得できる。むしろ、頑張っている姿が見えると、応援したくなる。
結局、セルフかどうかの問題ではないのだと思う。誠意が見えるかどうか、その一点に尽きる。
「人は頑張っている人を応援したくなる」という事をある方から聞いた。
その通りだと思ったっし、もっと普遍的な価値観でもある。
エジソンからの学び
トーマス・エジソンは「天才とは、天の与える一パーセントの霊感と、自ら流す九九パーセントの汗からなる」と言葉に残している。結果よりも、姿勢や積み重ねを尊ぶ考え方だ。
ラーメン屋の水の話は、些細な出来事かもしれない。
でもそこには、「誠意が見える行動は、人の心を動かす」という、ごくシンプルで強い真理があるように思える。
忙しければ納得できるし、頑張っている人は応援したくなる。その感覚は、今も昔も、あまり変わっていないのかもしれない。
ちなみに萬馬軒ではセフルと謳いながら、手すきであった店員が水を持ってくれた。その心が嬉しかったし、だからこそ、これからの発展を祈りつつ萬馬軒を応援したいと思った。
アクセス・店舗情報
- 店名:萬馬軒 西新宿店
- 住所:東京都新宿区西新宿1-14-5 新和ビル B1F
- 最寄駅:新宿駅(西口)
- アクセス:新宿駅西口より徒歩約3〜5分
- 営業時間:全日:11:00~23:00
- 席数:全23席[カウンター席:15席 テーブル席:8席(4名席2卓)]
- 支払い方法:現金・クレジットカード・電子マネー


コメント