創業は易く、守成は難し
出典:『貞観政要 全訳注』(講談社学術文庫)呉兢編/石見清裕訳
中野駅 タパス&タパス Tapas&Tapas
中野駅近くで長く愛され続けるイタリアン「タパス&タパス」。来年40周年を迎える同店で、定番パスタを中心に実食しました。タパス風スパゲッティをはじめ、シェアして食べたから見えてきたのは、変わらないために続けてきた工夫と積み重ね。味と時間の両方から、その“続く理由”をたどります。

入店きっかけ・理由
若手の叶さんと「パスタを食べに行こう」という話になった。
というのも、叶さんと好きなパスタの話で、そのときにタパス&タパスのことを熱弁した。
タパスは一度食べると定期的に食べたくなる中毒性があり、なおかつ唯一無二のパスタが数多くある店。ちょうど桜の季節でもあり、「せっかくだから哲学堂の桜も見たい」という話になって、間宮さんも誘い、中野店へ行くことに決め、日時を合わせた。
店内描写
店内はポーランド食器があちこちに飾られていて、全体的におしゃれな雰囲気。
一方で、使い込まれた感じのあるインテリアも混ざっていて、洒落てはいる。
ただ、いいところは、肩に力が入るような空気ではない。
厨房前にはカウンター席が4席ほどあり、基本はテーブル席が中心。
窓際の席は四人席を二人席に切り離せる造りになっていて、客の出し入れを工夫されている。
窓の外には桜並木が広がっていて、眺めのいい席で食事を楽しめるのも印象的だった。


注文
ランチタイムは、パスタ一品と、サラダ・ドリンク・デザートが付くセットも用意されている。
パスタは大きく分けて4種類。
オリーブオイル系、トマトソース系、クリーム系、そして、ザ・タパスの和風がある。
これがまさに唯一無二のタパスの醍醐味だと思う。
そんな中、叶さんが
「この店はインスタをフォローしているとドリンクが無料になりますよ」
と教えてくれた。
ドリンクはそれで対応できそうだし、デザートはなくてもいい。
それならば、単品にしたほうがいい、という叶さんのアドバイスもあり、今回は単品で注文することにした。
ただ、みんなメニューを決めかねており、せっかくならいろいろ食べたいよねという思惑が一致、後から来た間宮さんも加わり、それぞれ注文してシェアすることに。



創業背景・歴史
タパス&タパスの創業と会社の成り立ち
タパス&タパスは、1987年に誕生した南欧料理を軸とするレストランブランドだという。
運営しているのは 株式会社ジャパンフードシステムズ。公式サイトの会社概要によると、同社は昭和62年5月23日に設立され、以来レストラン経営を主事業としてきた。
創業当時は、現在のようにパスタ専門店やカジュアルな南欧料理店が街に溢れていた時代ではなく、「本格的な味を、もっと気軽に」という発想そのものがまだ新しかった時期だと考えられる。タパス&タパスは、そうした時代背景の中で、日本人の味覚に寄り添った南欧料理を提供する店としてスタートしたらしい。
ブランドとしての拡大と継続
株式会社ジャパンフードシステムズは、タパス&タパスを主力ブランドとして、都内を中心に複数店舗を展開してきた。
公式サイトでは「どこよりも美味しく、どこよりもリーズナブルに」というコンセプトが掲げられており、創業から現在に至るまで、その姿勢が一貫していることがうかがえる。
価格を抑えつつも、ソースから手仕込みにこだわるスタイルは、単なるチェーン展開ではなく、“味で記憶に残る店”を目指してきた歴史の表れとも言えそうだ。この考え方が、長年にわたりリピーターを生み続けてきた理由の一つではないだろうか。
実食レポート
タパス風スパゲッティ
タパス&タパスの代名詞とも言われているのが、このタパス風スパゲッティ。
オイルベースにエビ、イカ、アサリといった魚介が入り、仕上げに海苔と貝割れがのる独特の一皿。
海鮮の塩味ベースでありながら、それだけでは終わらないタパスならではの味付けで、ガーリックがしっかり効いているのに後味が重くならない。
安定感のある、タパスを代表する一品だと感じる。
一時期、海鮮の具材が冷凍のチープなものに変わったことがあり、その頃は正直、信頼がぐらついた記憶もある。ただ、価格を上げることで素材の質を見直し、きちんと立て直してきた。
その結果、再び素材の良さが感じられる一皿に戻り、今ではタパスの中で絶対王者の立ち位置を改めて確立していると感じた。

タパス風スパゲッティ 1200円
エビと揚げナス からすみのペペロンチーノ
エビと揚げナスを組み合わせたペペロンチーノは、タパス&タパスの中でも少し通好みの一皿、という印象がある。
叶さんが言うには、の旨みと揚げナスの油分がオイルソースによくなじみ、ニンニクと唐辛子のシンプルな構成ながら、物足りなさを感じにくい、というもっともらしい感想だった。 実際に食べてみても、揚げナスは油を吸ってコクを出しつつ、えびのプリッとした食感がアクセントになっている。 なによりポイントになるのが、からすみの存在で、これが加わることで塩気と旨みが一段階引き上げられ、ペペロンチーノ特有の直線的な味わいに奥行きが生まれている。 全体としてはオイル系らしい軽さを保ちながらも、素材の重なりでしっかり満足感を作っていて、ガーリック系が好きな人や、いつものトマト・クリーム系から少し外したいときに選びたいメニュー、という感じだ。

エビとなす揚げナスからすみのペペロンチーノ 1180円
モッツァレラチーズと揚げナスの完熟トマトソース
モッツァレラチーズと揚げナスの完熟トマトソースは、タパス&タパスのトマト系パスタの中で、安定感のある定番メニュー。
細めの麺に完熟トマトソースがよく絡み、見た目以上にボリュームと満足感がある。
トマトソースは酸味が強すぎず、甘みが感じられる食べやすい味わいで、いわゆるトマトの主張が前面に出るタイプではない。
揚げなすはしっかり油を含んでいてコクを加える役割を担い、そこにモッツァレラチーズの爽やかなコクが合わさることで、全体がまろやかにまとまっている。
ガーリックや辛味を前に出すタイプではなく、全体のバランスを重視した構成のため、重すぎず、それでいて物足りなさも感じにくい。
なにより、安心して選べるトマト系パスタだ。

モッツァレラチーズと揚げナスの完熟トマトソース 1100円
訪問後記
創業は易く守成は難し
出典:『貞観政要 全訳注』(講談社学術文庫)呉兢編/石見清裕訳
太宗・李世民が『貞観政要』の中で示した、時代を超えて通用する統治の原理である。
唐の名君が語った「創業は易く守成は難し」とは、国を興すよりも、平和を保ち、秩序を守り、文化を育て続けることの方がはるかに難しいという意味だ。
創業には情熱がある。しかし、守成には忍耐、改善、適応、そして理念を揺るがせない一貫性が求められる。太宗が残したこの言葉は、国家だけでなく、企業やブランドにもそのまま当てはまる“継続の哲学”であり、長く続くものだけが辿り着ける境地を静かに教えてくれる。
1987年に産声を上げたタパス&タパスは、来年で40周年を迎える。
南欧の色彩、手作り感、気軽さ。
創業時に掲げた価値を守りながら、時代に合わせて少しずつ進化を重ねてきた。
この歩みはまさに、唐の太宗の言葉――
「創業は易く守成は難し」
をそのまま体現しているように見える。
経済産業省の統計によれば、飲食業は毎年5〜6%の事業者が市場から姿を消すという厳しさを抱えている。
この環境の中で、40年続く外食ブランドは統計上わずか0.数%にすぎない。
だからこそ、タパス&タパスの40周年は単なる節目ではない。
それは、外食産業が直面する「生存率の壁」を越えてきた証明でもある。
40年続くということは、ただ料理を出し続けたという意味ではない。
地域に受け入れられ、必要とされ、その年月だけ商いを“許されてきた”という事実だ。
タパスは、単なる飲食店ではなく、日常の一部として生き残ってきたブランドなのである。
タパスからの示唆を、自分にそっとインストール
さて、私はどうか。
積み上げてきたものに胡坐をかいていないだろうか。変わらないことを言い訳に、変えるべきところから目を逸らしてはいないだろうか。守るとは、ただ同じ場所に留まることではなく、問い直し、学び続けることなのかもしれない。
40年続くという事実は、時間の長さではなく、選ばれ続けてきた結果だ。
目の前の一日を雑に扱わず、今日をきちんと終える。
その積み重ねだけが、いつか「続いている理由」になる。
タパス&タパスの40年を前にして、守ることの重さは感じた。
ただ、なぜ、叶さんと間宮さんと代金まで払わないといけないか。
その重さは相変わらず理解できない。
アクセス+店舗情報
- 店名:タパス&タパス 中野店
- 住所:東京都中野区中野5-67-6 ビジネスハイツ中野 2F
- アクセス:JR中央線/東京メトロ東西線「中野駅」北口より徒歩約3分
- 営業時間:
- 月〜金
11:30〜15:00(L.O.14:30)
17:00〜22:00(L.O.21:30) - 土・日・祝
11:30〜16:00(L.O.15:30)
17:00〜22:00(L.O.21:30)
- 月〜金
- 周辺環境:
中野通り沿い。旧中野サンプラザの向かい側に位置し、駅前の賑わいから少しだけ視線を上げたビルの2階。買い物や食事の選択肢が多いエリアでありながら、店内に入ると通りの喧騒から離れた落ち着いた時間が流れる


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