「人の行く裏に道あり花の山」。
裏道を行く人は孤独です。しかし、そのように緊張していることが大事なんです。
「名言の内側」木村尚三郎著 日本経済新聞社
新橋で立ち食いそばを探しているなら、迷わず「丹波屋」へ。ニュー新橋ビル1階に店を構える創業40年の老舗で、昔ながらのスタイルを守り続けています。券売機はなく、店主に直接注文するワンオペ方式。今回いただいたのは、圧倒的人気の「春菊天そば」。さらに、ニュー新橋ビルならではの“裏動線”の謎も魅力のひとつ。表からは見えない世界で、店主は黙々と仕込みを続けています。「人の行く裏に道あり花の山」。多数派に流されず、自分の目で確かめる街歩きの楽しさを、この一杯が教えてくれます。
新橋で立ち食いそばならここ!丹波屋に入った理由
年末の新橋。平日なのにサラリーマンの姿は少なく、街全体が静かで、いつもの賑わいはどこへやら。
頼みの綱のニュー新橋ビルに向かってみたものの、営業している店はわずかで、開いている店はどこも行列。
こういう時こそ回転の早い立ち食いそばに限る。
しかも年越しそばを食べれば、一石二鳥だ。そう思った瞬間、まだ足を運んだことがなかった「丹波屋」の暖簾が頭に浮かんだ。
新橋そばの名店と聞いていたし、今日は絶好のタイミング。迷わず丹波屋へ向かうことにした。

丹波屋の店内は?立ち食いそば屋ならではの雰囲気
店内は詰めて8名ほどが立てるコンパクトな空間。
L字型のカウンターがあり、その突き当たりにも小さなカウンターが設置されている。
奥にはテレビがあるが、客席からは見えにくく、おそらく店主用だろう。

カウンター上には揚げ物やおにぎり、いなりが並び、食欲をそそる光景。つい「もう一品」と手が伸びそうになる。
壁には過去の新聞や雑誌記事とメニューが貼られているが、カウンターを背にするため見づらいので、事前に注文を決めておくのがおすすめ。
| カテゴリ | メニュー | 価格(税込) |
|---|---|---|
| 天ぷら・トッピング | たぬき | 460円 |
| コロッケ | 480円 | |
| ごぼう天 | 490円 | |
| ちくわ天 | 490円 | |
| きす天 | 510円 | |
| げそ天 | 510円 | |
| 玉ねぎ天 | 510円 | |
| 春菊天 | 530円 | |
| 温かいそば・うどん | かけ | 360円 |
| 玉子 | 440円 | |
| とろろ昆布 | 450円 | |
| わかめ | 470円 | |
| きつね | 470円 | |
| 冷たいそば・うどん | もり | 390円 |
| ざる | 470円 | |
| 天もり | 540円 | |
| 天ざる | 620円 | |
| 大もり | 520円 | |
| 大ざる | 600円 | |
| ご飯もの | インドカレー | 460円 |
| ミニカレー | 290円 | |
| インドカレー+そば(温)セット | 760円 | |
| ミニカレー+そば(温)セット | 630円 | |
| おにぎり | 110円 | |
| いなり | 70円 |
丹波屋で注文!人気No.1春菊天そば
丹波屋には券売機がなく、昔ながらのスタイルで店主に直接注文する仕組み。
この日は、ワンオペなので、調理の合間を見て声をかけるタイミングが大事だ。
今回選んだのは、店頭の記事でも「圧倒的一番人気」と紹介されていた春菊天そば。
カウンター上に並ぶ揚げ物の中でも、春菊天のストック量が圧倒的に多い。
それだけ注文が集中するということだろう。
丹波屋の歴史|新橋で40年続く立ち食いそばの老舗
1971年、戦後の雑多な風景がまだ残っていた新橋駅前に、都市改造事業の象徴として「ニュー新橋ビル」が誕生した。
市街地改造法に基づき計画されたこの建物は、通路をループ状に巡らせ、どの区画も不利にならないよう設計されたという。
外観にはプレキャストコンクリートの梯子状パターンが採用され、350mに及ぶ立面に独特のモアレ効果を生み出したらしい。
そんな巨大ビルの1階、駅前の雑踏と地続きの路面に、1984年(昭和59年)に一軒の立ち食いそば店が暖簾を掲げた。それが「丹波屋」である。
創業当時の新橋は、今以上にサラリーマンの街として活気に満ち、昼時にはどの店も行列ができるほどの賑わいだったという事だ。約40年にわたり、新橋のサラリーマンに愛され続ける理由は、この変わらぬスタイルにあるらしい。
実食レポート|丹波屋の春菊天そばと店内のリアル

注文からわずか3分ほどで春菊天そばが到着した。
まず目を引くのは、薄めの衣からのぞく春菊の青々とした葉。
しっかりとした厚みもあり、そのため素材の香りやほろ苦さがダイレクトに伝わってくる。
一方でつゆは関西寄りのやや薄口。鰹節の香りがふわりと立ち、昆布の旨味がじんわり広がる上品な味わいだ。
さらに麺はむらめん製麺所から仕入れた北海道・幌加内産そば粉を使った生麺で、柔らかく、喉越しも軽やか。
春菊天をつゆに浸すと衣がほどよくほぐれ、その結果野菜の香りがふわっと広がる瞬間が心地よい。
ところが食べ進めている途中で水が提供されたのだが、これは特別な心遣いというより、店主がひと段落したタイミングだったようだ。
入口右奥に冷水機はあるものの、混雑時はセルフで取りに行くのが難しく、結局店主の手が空いた時に提供される仕組みらしい。こうした“ワンオペ感”もまた、丹波屋らしさを形づくる一部と言える。
丹波屋の謎|店主はどこから出入りしているのか?
この店にはひとつ、長年の常連でも答えを持たない“謎”がある。
店主は、どこから出入りしているのか。
厨房は客席に囲まれ、表側には扉らしい扉が見当たらない。カウンターの奥には寸胴と揚げ鍋が並び、通路らしい隙間はほとんどない。それでも、開店前には店主が現れ、閉店後には姿を消す。
その動線は、客側からは一切見えない。
ニュー新橋ビルは1971年の再開発時に、テナント裏に細いバックヤード通路を設ける構造が採用された。
表の雑多さとは対照的に、裏側には店員だけが使う“もうひとつの迷路”が存在する。
丹波屋の厨房は、その裏動線と接続していると考えるのが自然だ。
今回、我々取材班は、大成有楽不動産の募集資料から、ニュー新橋ビルの平面図を入手することに成功した。設計図には、テナント裏側に共用のバックヤード通路が確認できる。丹波屋の厨房はこの裏動線に接続していると推測され、店主はこの通路を経由して店舗に出入りしている可能性が高い。
つまり、丹波屋は「表からは見えない裏の世界」を通じて動いている。
ただ、これは推測でもあるので、今後も取材を続けたい。
訪問後記
「人の行く裏に道あり花の山」。
裏道を行く人は孤独です。しかし、そのように緊張していることが大事なんです。
「名言の内側」木村尚三郎著 日本経済新聞社
日本を代表する西洋史学者・文明論者、木村尚三郎氏が語った「裏道を行く」という言葉には、深い背景がある。
人が行く表の道でも、効率だけを求めた近道でもなく、あえて誰も歩かない裏道を選ぶこと。
そこには、自分の価値観で生きるという覚悟が込められている。
裏道を行く人は、どうしても孤独になる。
多数派に合わせず、自分の目で確かめ、自分の足で進むから。
しかし、木村氏は、この“孤独の緊張感”こそが大事だと語る。
裏道は舗装されていないからこそ、油断すると道が消えてしまう。
だからこそ、緊張しながら歩くことで、初めてその道が“自分の道”になるのだと。
丹波屋もそうだ。
確かに店は一人で切り盛り。途切れることなく訪れる客の期待を裏切ってはいけないと、だしの準備や、揚げ物に余念がない。
人の行く裏に道あり花の山。
裏道には、表の道では見えない景色がある。その景色を見に行く覚悟が、人生を豊かにする。
それを丹波屋は教えてくれる。
アクセスと店舗情報
- 店名:丹波屋(たんばや)
- 住所:東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル 1F
- 最寄り駅:JR新橋駅 烏森口から徒歩約1分(約90m)
- 営業時間:月~金・祝前日・祝後日 7:00~19:00
- 定休日:土曜・日曜・祝日
- 電話番号:03-3508-9579
- 席数:立ち食いカウンター 約8席
- 周辺環境:ニュー新橋ビル内には飲食店多数。周辺にはSL広場、銀座方面への散策も可能。



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