荻窪の人気ラーメン店「りょうが」初訪問記。湯気の向こうに見えた厨房の美学、赤ペンの所作、そして“またやってしまった”ラーメン選び。つけ麺の真価を確かめに、次回の訪問を誓う。
先輩の一言で荻窪へ
「お前、りょうが知らずに荻窪のラーメン語ってんじゃねえぞ、バーロー」
武茂の話をしていたら、先輩が急に真顔になってそう言った。
※「武茂」の話はこちらから👇👇👇
その一言で午後の予定は決まった。荻窪「りょうが」へ向かう。
開店直後にもかかわらず、すでに並びができていた。並ぶほどの価値がある店ということだ。

先入観の罠
店に足を踏み入れると、すかさず「食券をどうぞ〜」と声が飛んできた。
…ん?券売機が見当たらない。
視線が宙をさまよっていたのだろう、店員さんがそっと助け舟を出してくれた。
券売機は、入口ではなく店の最奥に鎮座していた。
「券売機は入口近くにあるもの」という思い込みが招いた、ささやかな取りこぼし。
久々に“先入観の罠”に足を取られた気分だ。
本来なら、言われる前に気づくべきだった。
余計な気遣いをさせてしまったことが、少しばかり悔やまれる。
メニューは潔く、迷いの余地がないほどにシンプル。
初訪問の店では、まずは看板メニューのプレーンを選ぶのが私の流儀。
「中華そばの店」と掲げるなら、ここは迷わずラーメン一択。
迷いなく、ラーメンのボタンを押した。

信州から荻窪へ
「りょうが」は、長野県松本市を中心に4ブランド8店舗(他にFC5店舗)を展開する凌駕グループの新ブランドらしい。2025年6月11日、荻窪に移転オープンしたという。
もともとは千歳烏山で間借り営業をしていたが、吉祥寺を経て荻窪に独立移転したとのこと。
東京ラーメン史において荻窪は“聖地”とされており、春木屋などの名店が並ぶ中での出店は挑戦でもあるようだ。店主は「べんてん」「としおか」に通い詰めたという話もあり、インスパイア系としてのこだわりが随所に見られる。
さらに、荻窪の老舗「丸長」スタイルのつけ麺を裏メニューとして提供しているという。食券を渡す際に「荻窪で」と伝えると、特別なつけ麺が出てくるらしい。
器や麺は三河屋製麺を使用し、丼はインスパイア元と同じ窯元でオリジナルを作ったという話もある。厨房の分業や所作にこだわりが感じられるのは、そうした背景があるからだろう。
振り向いても奴はいない
店内はカウンター8席の小料理屋風。
木のぬくもりと湯気が、静かに空間を包んでいる。
ふと周囲を見ると、6:1でつけ麺。
…また、やってしまった。
隣の席では、瓶ビールとチャーシューの小皿。
朝からの粋。
それが注文なのか、お通しなのかはわからない。
でも、グラスと小皿を隅に寄せて、中央に器のスペースを確保する所作が美しい。
「はい、お待ちどうさま」——つけ麺が滑り込む。まったくスキがない。
この流れがあまりにスムーズで、感心してしまう。
私は券売機の時点で脱落していたのかもしれない。
厨房の美学
厨房には男性2名。
湯切りと盛り付け、声かけと受け渡し。
無駄がなく、流れるような動き。
まるでマクドナルド兄弟のキッチン設計図。
それを見て、ふとレイクロックの言葉が浮かんだ。
何事も小さな仕事に分けてしまえば、特に難しくない。
レイクロック
湯気の向こうに、分業の美学があった。
そうか、私もこの店をチェーン展開させなければならないのか。 その場でネットで調べると、調査を依頼したら、すでに凌駕グループというチェーン化を志す組織に属しているらしい。
そうなると私はレイクロックにはなれないか。そんなこと関係なくなれないだろうけど。
そんな妄想をしている間に、ラーメンが到着。

「器が熱いので気を付けてください」——その一言が、湯気よりも温かい。
スープはだしのきいたやさしさ。しょうゆベースの、ザ・荻窪ラーメン。
奇をてらわず、記憶に残る味。まるで荻窪そのもの。
赤ペンに隠された謎
先輩に「りょうがに行け」と言われてやって来た。
人気店だけあって、ひっきりなしに人が吸い込まれていく。
回転の速さに、店の空気もどこかピリッとしている。
ふと気づけば、食券を渡すタイミング。
カウンターの“マクドナルド兄弟”に手渡すと、
「荻窪*#$%#」
——荻窪の後が、どうにも聞き取れない。
でも、彼らはその言葉を受けて、赤ペンで何かをさらりと書き込む。
次のお客も「荻窪し…」と何か言っている。
「荻窪市民」?「荻窪下」?
いや、荻窪は市じゃないし、ここは北口。なら「荻窪上」か?
でも、聞くには勇気がいる。
この場の空気に、余計な質問は野暮だ。
タイムアップ
そこで、先輩にショートメールを送ってみる。
が、既読にならず、返事も来ないまま、ラーメンは静かに完食。
万事休す。謎は謎のまま、タイムアップ。
それにしても、後から来た人はみんなつけ麺。
ラーメンもやさしい味だったけれど、
「りょうが」の本領は、つけ麺にあるのかもしれない。
次は、つけ麺を頼もう。
そして、あの赤ペンの意味を確かめに行こう。
マクドナルド兄弟に心の中でそっと感謝を伝え、
私は「りょうが」を後にした。
「次は、荻窪*#$%#の謎を解いてから来ます」
そう誓いながら、駅へと歩を進めた。
訪問後記

先輩に言われて訪れた「りょうが」。券売機の罠、厨房の分業、赤ペンの所作、常連の美学。すべてが湯気の向こうにあった。ラーメンを頼んだのは僕だけだったけれど、それもまた良い経験。次は、つけ麺を頼もう。そして、あの赤ペンの意味を確かめに行こう。
アクセスと店舗情報
- 店名:中華そばの店 りょうが
- 住所:東京都杉並区上荻1-4-9
- 最寄り駅:JR中央線・東京メトロ丸ノ内線「荻窪駅」北口 徒歩2分
- 営業時間:火〜土 11:00–15:00/17:00–翌1:00、日曜昼のみ営業
- 定休日:月曜・日曜夜
- 電話番号:03-6383-5926
- 周辺環境:春木屋の裏手、荻窪銀座商店街近く。食後の散策にも最適。
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