戦いは五分の勝利をもって上となし、七分を中となし、十分をもって下となる。
武田信玄
五分は励みを生じ、七分は怠りを生じ、十分はおごりを生ず
味噌ラーメン宏ちゃん
吉祥寺の街歩きの途中、ふと味噌ラーメンが食べたくなって立ち寄った宏ちゃん。サンロードの先、静かな通り沿いにあるこの店には、派手さとは違う魅力があります。店内の空気、調理の所作、一杯のラーメンから感じたことを、街歩きの記録としてまとめました。初めての吉祥寺散策にも、味噌ラーメン探しの参考にもなる一軒です。

吉祥寺で味噌ラーメンを探すなら
食べ歩きで見つけた「味噌ラーメン宏ちゃん」入店理由
吉祥寺で映画を楽しんだあと、つけ麺の間宮さんで軽く食事をしてから「そろそろ別の味も開拓したいよね」という話になった。これまで塩、豚骨、そば、辛い系、醤油とひと通り巡ってきたので、今回は久しぶりに味噌ラーメンが食べたくなった。吉祥寺には味噌を扱う店はあるものの、「味噌ラーメンを主軸にしている店」となると意外と少ない。そんな中で、サンロード商店街を抜け、五日市街道に出た先で見つけたのが「味噌ラーメン 屋 宏ちゃん」。店の佇まいから濃厚な味噌の香りを期待させるものがあり、せっかくなら専門店の味を確かめてみようと入店を決めた。
迷わず味噌ラーメンを注文
宏ちゃんの券売機メニューと選び方ガイド
ガラガラとドアをスライドさせると、早速目の前に現れるのが、こちらの名物ともいえる即断即決の券売機。入店してすぐに選択を迫られるこの感じが、どこか吉祥寺の路地裏らしい勢いを持っている。
メニューは味噌ラーメンを中心に、醤油、塩、つけ麺とひと通りそろい、そこに卵や辛みを加えることでメニューが自然と広がっていく構成だ。
今回は味噌ラーメンを食べようと決めて来ているので、味噌以外を選ぶ余地は最初からなかった。大盛りや玉子、ネギといったトッピングにも心が揺れたが、先ほど少し食べていることもあり、食べ過ぎの懸念からここは自制してシンプルに味噌ラーメンの食券を購入。
つけ麺間宮さんはというと、今回もブレることなく味噌つけ麺を選び、ふたりして味噌一直線の注文となった。

メニュー表 ※2026年2月時点
麺類
| 商品 | 価格 |
|---|---|
| 味噌らーめん | 950円 |
| 味噌味玉入り | 950円 |
| 味噌バターコーン | 1,050円 |
| 辛味噌らーめん | 950円 |
| 醤油らーめん | 800円 |
| 醤油味玉入り | 900円 |
| 塩らーめん | 800円 |
| 塩味玉入り | 900円 |
| 塩バターコーン | 1,000円 |
| 豪味噌 | 1,200円 |
| つけめん | 950円 |
| 辛つけめん | 980円 |
| 味噌つけめん | 950円 |
| 辛味噌つけめん | 980円 |
トッピング
| 価格 | |
|---|---|
| 味玉 | 100円 |
| コーン | 100円 |
| バター | 100円 |
| のり | 100円 |
| もやし | 100円 |
| チャーシュー | 350円 |
吉祥寺の味噌ラーメン宏ちゃん
湯気に包まれる縦長の店内描写
店内は縦長のつくりで、入ってすぐ左手にL字のカウンターが続いている。
席数はおそらく12席ほどだろうか。カウンターの後ろにはテーブル席のような机と椅子が置かれているものの、実際には荷物置き場として使われていて、食事用としては稼働していない様子だ。
カウンターの向こう側が厨房になっているため、店内にはふわりと湯気が立ち込めており、味噌ラーメンの温かな香りがゆっくりと広がっている。
店を切り盛りしているのは、宏ちゃんと思われる男性と、その奥様らしい女性のふたり。無駄のない動きでラーメンを仕上げていく様子が、店の温度と一緒にじんわりと伝わってくる。
静かながらも、どこか家庭的な空気が漂っている店内だった。

味噌ラーメン宏ちゃんの歴史
吉祥寺で愛され続ける一杯の背景
味噌ラーメン宏ちゃんは、もともと 「つけ麺屋 宏ちゃん」 として営業していた時期があったという。2011年頃まではつけ麺中心の店だったという情報が複数の口コミに見られ、現在の味噌ラーメン中心のスタイルへ転換したのは、その後のことらしい。また、店主は 高田馬場の人気店「べんてん」で修行していた という証言が食べログやブログ記事に残っており、しっかりした基礎のある“東京味噌”を作りたいという思いが背景にあると考えられる。
夫婦で切り盛りしているという記述も多く、地元客の生活導線に寄り添う「普段使いできる味噌ラーメン」を目指しているようだ。奇をてらわず、長く愛される味に重きを置いているところがこの店の価値観だという。
吉祥寺・宏ちゃんの味噌ラーメン実食レポ
湯気が立ち上がる一杯の魅力

席に座っておよそ8分ほどで、味噌ラーメンがカウンター越しに登場した。
その前から、味噌を入れたり調味料を加えたり、もやしを麺と一緒に茹でたりと、調理の一部始終が見えていて思わず見入ってしまう。
派手さはないものの、どこか落ち着いた佇まいで、ふんわりとのったネギと、何より特徴的なワカメがまず目に入る。味噌汁にワカメを使うことを考えれば、味噌ラーメンにワカメがのっているのは至極まっとうで、全く違和感がない。
そしてこのワカメが、ネギ同様にさっぱり感を出してくれて良い感じだ。
表面には軽く油が浮き、味噌の香りが先にふわりと広がる。スープをひと口飲むと、味噌のコクがしっかりしているのに濃すぎず薄すぎず、絶妙な塩梅。当たり前だけれど、味噌ラーメンの味噌と味噌汁の味噌は本当に別物だと実感する。
麺は味噌ラーメン定番の中太縮れで、スープをしっかり拾ってくれて食べ応えがある。
もやしはシャキッとした歯ざわりが残っていて、濃い味噌に軽さを足してくれる。
チャーシューも脂が主張しすぎず、全体に自然と馴染んでいた。食べ進めるほどに体の中心がじんわり温まっていく、そんな一杯だった。
入店時のエピソード
厨房で見えた二人の距離感
前述したように、厨房には宏ちゃんと思われる男性と、その奥さんらしい女性が並んで立っている。最初はずっと丁寧な敬語で会話をしていたので、「あれ、夫婦じゃなくて職場のコンビなのかな?」と少し不思議に思いながら見ていた。ところがその印象はすぐに覆る。調理の合間に、ちょいちょい小競り合いのようなやり取りが始まり、その瞬間だけ敬語が外れ、生活感のある言葉がぽんぽん飛び交う。上司と部下の距離感ではまず出てこない温度で、「あ、これは完全に夫婦の雰囲気だな」と確信した。
本人たちには本当に申し訳ないが、どこか昭和のホームドラマを見ているような味わいがあり、ついこちらも頬が緩む。湯気と味噌の香りに、夫婦漫才のような空気が少し混じることで、店全体に独特の温度が生まれていた。ラーメンを待っている時間さえ、どこかほっこりするような不思議な空気だった。
訪問後記
戦いは五分の勝利をもって上となし、七分を中となし、十分をもって下となる。
武田信玄
五分は励みを生じ、七分は怠りを生じ、十分はおごりを生ず
この言葉は、戦国武将・武田信玄の言葉として伝えられている。
武田信玄は甲斐国・信濃国を治めた戦国大名で、戦の強さだけでなく、国を保ち、人を束ねる在り方に長けた人物だったという。勝ちすぎれば人は驕り、負ければ折れる。だからこそ信玄は、完全な勝利ではなく、次につながる余白を残した「五分の勝利」を最上と考えた。その背景には、人は常に緊張と緩みの間で生きている、という冷静な人間観があったのだろう。
武田信玄といえば、味噌を大切にした武将としても知られている。信玄は兵糧として味噌づくりを奨励し、行軍の途中で発酵させる「陣立味噌」を考案したと伝えられている。これが、のちに信州で味噌づくりが広まり、現在の信州味噌文化の礎になったとされている。派手さはないが、日々を支え、長く人を生かす食。
信玄にとって味噌は、戦の道具であると同時に、秩序を保つための土台でもあった。
宏ちゃんの厨房で見た、二人のやり取りもまた、この言葉と重なって見えた。
敬語で距離を保ちながらも、ときにぶつかり合い、言いたいことを言う。
それでも関係が壊れることはなく、同じ鍋に向かって手を動かし続けている。どちらかが完全に勝つわけでもなく、相手をねじ伏せるわけでもない。争いながらも秩序を保ち、仲良く共存している姿が、そこにはあった。
味噌ラーメンも同じだ。
主張しすぎず、しかし曖昧でもない。濃さと軽さの境目にきちんと留まり、食べ手の身体を支える。
宏ちゃんの一杯と、あの厨房の風景は、勝ちすぎないこと、やりすぎないことが、長く続くための条件なのだと、静かに教えてくれた。
アクセスと店舗情報
- 店名:味噌ラーメン 宏ちゃん
- 住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-20
- 最寄り駅:吉祥寺駅(北口)
- 徒歩:約5分
- 営業時間:11:00〜23:00
- 定休日:不定休
- 支払い方法:現金のみ(券売機)
- 席数:カウンターのみ
- 周辺環境:サンロード商店街至近、五日市街道沿い

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