東京都八王子市楢原町にある「みんみんラーメン本店」は、八王子ラーメンの代名詞とも言える老舗。1982年(昭和57年)創業以来、地元に根差した味を守り続け、今や「八王子ラーメンといえばみんみん」と言われるほどの存在感を放っています。
八王子ラーメンの原点、みんみんラーメン本店の創業背景
みんみんラーメン本店が創業した当時、八王子ラーメンというジャンルはまだ確立されていなかったらしい。創業者は、地元の人々に愛されるラーメンを目指し、豚ガラベースの醤油スープにラードを浮かべ、刻み玉ねぎをトッピングする独自のスタイルを確立したという。このスタイルが後に「八王子ラーメン」として広まり、現在では多くの店舗がこの系譜を受け継いでいる。

みんみんラーメンの魅力は、門外不出の秘伝の醤油ダレと、豚ガラ・香味野菜から取ったスープ、そして自家製ラードの絶妙なバランスである。細麺とシャキシャキの玉ねぎが絡み合う一杯は、懐かしさと深い旨味を兼ね備え、訪れる人々の心を掴み続けている。
ネギラーメンと私の思い込み
初めて訪れるラーメン店では、まずは一番人気のシンプルな一杯を選ぶのが私のマイルール。今回はそのルールに従い、「中華そば」にしようと思いつつ、八王子ラーメンといえば刻み玉ねぎでしょうという思い込みから「ネギラーメン」を注文。
ところが、運ばれてきた丼を見て「ん?」と一瞬戸惑う。そこに乗っていたのは、私が期待していた玉ねぎではなく、立派な長ネギだった。なぜ「ネギ=玉ねぎ」と思い込んでいたのかは謎だが、そんなことでは動じない。目の前の一杯に集中する。

豚ガラベースの醤油味は、見た目以上に澄んでいて、口に含むとラードのコクがじんわり広がる。しっかりとした旨味がありながら、後味はすっきり。長ネギの香味が加わることで、スープに軽やかなアクセントが生まれている。
麺は中細のストレート。やや柔らかめの茹で加減で、スープとの絡みが良い。チャーシューは脂身控えめの肩ロースで、しっとりとした食感。メンマは細めで、ほんのり甘く、全体のバランスを崩さない控えめな存在感。
玉ねぎではなかったけれど、これはこれで正解だったのかもしれない。八王子ラーメンの定義にこだわるより、目の前の一杯を味わうことが大切だと気づかされる。
訪問後記:人間模様とスーパーの棚にて
昼時の「みんみんラーメン本店」は、店外に長蛇の列。店内はカウンター5席、座敷18席。非常に混雑していたこともあり、私は座敷に案内され、左右前と相席となった。
左隣は常連と思われる老夫婦。注文の手際や店員とのやり取りに、長年通っている風格が漂っていた。右隣は職場の先輩と後輩らしき二人。先輩はみんみんラーメンの歴史やメニュー構成、さらには「玉ねぎは季節で切り方が違う」など細かな情報まで語っていたが、後輩は「へ~、そんなんですね」とだけ返していた。きっと後輩は聞いていないだろう。
食後、左隣の席に学生らしき若者が座り、私が当初注文しようと思っていた「中華そば」を頼んでいた。思わず「写真を撮らせてもらえますか?」と声をかけたところ、快く応じてくれたものの、表情には「なんだこの人…」感が滲んでいた。
ラーメンを前にした一瞬の交流だったが、やはりこうした行為は慎むべきだったと反省した。

ちなみに最近、地元スーパーには「みんみんラーメン」が生ラーメン棚に並び始めた。あの味を家庭でも楽しめるのは嬉しい限り。しばらくはこれで我慢しよう。店の空気感や人間模様は再現できないけれど、あの一杯の記憶は、湯気の向こうに蘇る。
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何だかんだ本日も晴天なり 終了。


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