吉祥寺の回転寿司・天下寿司で味わう、昭和創業の納得感
「安くて、ちゃんとうまい」──その哲学は、令和の今も都内各地で静かに息づいている。
その精神を受け継ぐのが、吉祥寺駅南口から徒歩2分の「天下寿司 吉祥寺店」。物価高の時代にあっても、納得の満腹感を提供してくれる数少ない回転寿司の聖地だ。あの孤独グルメにも掲載されたほどの店で吉祥寺を語るには庶民の味方の天下寿司を差し置いて他を語ることはできない。

なぜ、人は天下寿司に行くのか?
吉祥寺には回転寿司店が複数あるが、ここ数年の値上げラッシュで、ネタもシャリも小さくなり、会計時には「え、これで?」と財布の軽さに驚くことも少なくない。
その点、天下寿司は違う。ネタもシャリも、ちゃんと“納得”のサイズ。基本は1皿130円、平日ランチタイムには120円になる。
1000円あればしっかり満腹になれる。もちろん、味がいいのは言うまでもない。
年配の方が多く通うのも、美味しさの証拠だろう。最近では外国人観光客も増え、開店と同時に満席になることもしばしば。
満席時の待機スタイルも独特。
店内の椅子で待機し、回る寿司と“フードファイター”たちの食べっぷりを観戦。
席が空くと順に詰めていき、先頭に来たらいよいよレーン席へ──まるで寿司版の参戦システムだ。
着席すると、今どき珍しくレーンに寿司がどんどん流れてくる。注文すれば即握ってくれる職人の手際も見事。
基本は130円均一だが、「マグロ三種盛」や「ぼたんえび」といった高単価ネタもある。
これらは130円ではないが、他店で同じクオリティを食べようと思ったら、倍の値段はくだらない。
天下寿司の価格設定は、ただ安いのではなく“価格以上の納得”を提供している。

そして、ふと目に留まったのが「カニ汁」。お値段190円。なのに、しっかりとカニが入っている。
しかも、ただ殻だけではない。ちゃんと身もついていて、スプーンでほぐせばふわっとした甘みが広がる。
この価格でこの内容──天下寿司の仕入れ先との強い協力関係があるのだろう。
安さの裏にある信頼と工夫。それが、カニ汁の湯気にまで滲んでいる。

イベントの内容の今昔
さらに、天下寿司 吉祥寺店のもうひとつの魅力が「天気連動割引サービス」だ。
気温や天候に応じて、特定のネタやドリンクが割引になる。
- 雨の日:炙りネタや手巻きが割引
- 雪の日:中とろ、日本酒が対象
- 寒い日:みそ汁が半
訪れた日は、あいにくの雨。いや、運が良かったのかもしれない。
イワシ炙りとネギトロ手巻きが割引対象になっていた。


店に入ると、すぐに店員さんから「まだ雨、降ってますか?」と聞かれた。
どうやら、雨がやんだら割引は終了らしい。太っ腹なようでいて、価格にはシビア。
びた一文、無駄な割引はしない。その姿勢が、店員の一言に滲んでいた。
昭和の終わり頃に吉祥寺に現れたこの店は、令和の今もなお“130円の奇跡”を握り続けている。
物価高の東京で、財布にも心にも優しい寿司屋があること。
それだけで、今日の空模様が少しだけ晴れた気がした。
何だかんだ本日も晴天なり 第25話終了


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