今年もこの季節がやってきた。秋祭り。
神輿が数十台も並び、担ぎ手たちの熱気が街を包み込む。
祭囃子と威勢のいい掛け声が響き渡り、まるで街全体が一つの生き物になったかのような一体感。街の空気が、いつもより少しだけ熱くなる。

そんな祭りに、人生をかけている人がいる。
趣味は「祭りに参加すること」。いや、趣味というより信仰に近い。
毎年、有給を使って祭りに参加するのだが、その覚悟がすごい。
「有給が取れないなら辞めます」と、真顔で言う。
冗談かと思いきや、目が本気。
上司も「そこまで言うなら…」と渋々承諾するしかない。
しかも祭りは2日間なのに、なぜか1週間休む。理由を聞けば「準備と後片付けがあるから」とのこと。なるほど、祭りは“本番”だけじゃないらしい。
そして、ようやく職場に戻ってきたと思ったら、腕と顔はこんがり焼け、声は枯れていて、ほとんど仕事にならない。 「もう少し休んだら?」と思うが、準備から片付けまで含めてギリギリの有給消化という。
それでも誰も文句を言わないのは、彼の日々の信頼貯金の賜物だろう。普段の仕事ぶりが、こういう時に効いてくる。

兎にも角にも、有給をとったのは私である。
コメント