荻窪駅北口のアーケードに、時間が少しだけ止まったような町中華がある。昭和42年創業の「萬龍軒」。割烹着の女性が立つ厨房、手書きのメニュー、そしてラーメンと半チャーハンのセットが700円という価格設定。荻窪の街歩きで出会った、懐かしさに包まれる昼の記録。
アーケードの奥に、昭和の気配
荻窪での街ブラ。荻窪駅北口を出てすぐ、短いアーケードの一角に「萬龍軒」はひっそりと佇んでいた。
しかも、この周辺は老朽化もあり、都市開発の一環で取り壊しが部分的に始まっており、いずれこの一帯が都市開発の対象になるという。
店の隣には「丸福」、かつては「富士中華そば」も並び、荻窪ラーメン文化の静かな一角を形成していた。
ノスタルジックな店頭と、その店頭にあるセットメニューの安さと店内の賑わい、安さだけない魅力があるのだと惹かれて入店を決めた。
萬龍軒の歴史と立地
荻窪駅北口を出てすぐ、短いアーケードの一角に「萬龍軒」は鎮座している。昭和42年(1967年)創業、今年で58年目になる老舗町中華だ。ラーメンの街・荻窪の中でも、取材拒否気味の隠れた名店として知られ、地元民に長年愛されてきた。

通りには、萬龍軒のすぐ隣に「丸福」、かつては「富士中華そば」も並んでいた。いずれも昭和創業の中華そば店で、荻窪のラーメン文化を静かに支えてきた存在だ。競争というより、互いに湯気を立てながら共存してきたような空気がある。
店内の様子と割烹着の風情
店内はL字型のカウンターのみ。椅子は9脚、ぎゅっと詰まった密着型。昼時ともなれば、客同士の譲り合いが自然に始まる。席を詰めて、器をそっとずらして、互いに湯気を分け合うような空気がある。
厨房には店主と女性の姿。エビデンスはないが、長年連れ添った夫婦のような連携と空気感が漂う。しかも、女性はエプロンではなく割烹着を着ている。白い布地が湯気に溶けて、まるで昭和の家庭の延長線のようだ。
常連客と昼の空気
カウンターに着席。両隣には常連らしき壮年の男性が二人。60代後半から70代だろうか。ラーメンと餃子を前に、年齢にも負けずに食う。しかも、まだ12時を少し回ったくらいなのに、すでに瓶ビールが空きかけている。元気の源は湯気と麦かもしれない。
メニュー構成と価格の驚き
ラーメン半チャーセット700円を選ぶ
萬龍軒のメニューは、まず分類が味わい深い。「飯の部」「セットの部」「のみもの部」「其の他」と並び、まるで古い文集の目次のようだ。料理名よりも先に、構成そのものに引き込まれる。
そして、価格に驚く。ラーメンと半チャーハンのセットが700円。昭和のまま時が止まったような値付けに、思わず時計を見直したくなる。麺単品の記載がないのは、1品では採算が合わないからだろう。セットにすることで単価を調整し、町中華としての知恵と工夫がにじんでいる。
セットの部「ラーメン+半チャーハン」を迷わず注文。
厨房では割烹着の女性が手際よく動き、店主が麺を湯にくぐらせる。待ち時間は5分ほど。

ラーメンと半チャーハン
いよいよ、ラーメンと半チャーハンの登場。しょうゆベースの、いかにも荻窪という味。チャーシューもちゃんと乗っていて、ネギもいい。半チャーはしっとり系で、どこか懐かしい味がする。

BGMは藤井風ではなく、藤井フミヤの90年代歌謡曲。
店主の年齢には合わない気もするが、それもまた味のうち。
裏メニューと思いきや…
萬龍軒のメニューは、まず分類が味わい深い。「飯の部」「セットの部」「のみもの部」「其の他」と並び、まるで古い文集の目次のようだ。料理名よりも先に、構成そのものに引き込まれる。
麺単品の記載がないのは、1品では採算が合わないからだろう。セットにすることで単価を調整し、町中華としての知恵と工夫がにじんでいる。
注文後、隣の客がキムチラーメンを頼んだ。単品である。
メニューには「其の他」にキムチがあるので、それを組み合わせた裏メニューかと思った。
確かに、このまえの「りょうが」といい、この地域は歴史があるだけに、そういうの裏メニューみいなものが文化となっているのか。
続いてワンタンメンを頼む客も現れ、完全なる裏メニューかと思いきや、次に来た人がメニューを裏返したことで真相が明らかになる。
なんと、メニューには裏面があったのだ。
そこには「麺の部」と書かれ、キムチラーメンもワンタンメンも、しっかりと記載されていた。裏メニューではなく、ただの裏面だった。

この前の「りょうが」の話はこちらから👇👇👇

アクセスと店舗情報
- 店名:萬龍軒
- 住所:東京都杉並区荻窪5-30-6
- 電話番号:03-3392-1234
- 営業時間:11:30~20:00(火曜定休)
- アクセス:荻窪駅北口から徒歩3分、アーケード内
- 席数:カウンター9席
- 駐車場:なし


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